母の背中に感じる変化

「痛っ!」そのとき、美穂が包丁で指を切ってしまい、絆創膏を探しにバタバタし始めました。
「美和、ちょっと煮物見ててくれる?」と頼まれて、立ち上がろうとする私に母は、「いいよいいよ、美和はゆっくりしてなさい」といそいそとキッチンへ向かいました。
私はその背中を、リビングからじっと見つめていました。
いつもと変わらない、力強い母の姿。でも、どこか小さくなったような気がして、急に胸の奥に淡い不安が広がりました。これが“衰え”というのだろうか……。
家族の時間を大切に思う夜

キッチンからは、母と妹のやりとりが聞こえてきます。
「あれ、なんか色薄い?」「まだ味付け足りないかも」「じゃあ醤油入れとくよ」「入れすぎないでね、すぐ醤油入れたがるから」
――そんな会話の一つ一つが、懐かしく、愛おしく感じられました。
私は、母と過ごせる時間が、あとどれくらいあるのだろう、とふと考えます。忙しさにかまけて、見ないふりをしてきた現実。
けれど、母の背中が少しずつ小さくなっていくのを目の当たりに見て、これからの時間を大切にしたい、しないといけないと思い始めていました。それは焦りにも似た感覚でした。
次の週末も、また実家に来てみようか――そんな思いが、静かに胸に芽生えていたのです。
(つづく)
※HALMEK upの人気記事を再編集したものです。
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