便宜置籍船って何?
たとえば2021年3月23日に起きた出来事を見てみましょう。正栄汽船(本社:愛媛県今治市)が所有し、台湾の長栄海運(エバーグリーンマリン)が運航するコンテナ船がスエズ運河で座礁事故を起こしました。同運河の航行を妨げたことで、エジプトのスエズ運河庁は、当初約9億1600万ドルの損害賠償額を公表、同年7月7日に最終合意が成立したと報道されました。
この座礁したコンテナ船は、パナマに登録された典型的な便宜置籍船です。事故を起こした船は、船籍がパナマ、船主は日本の船会社という体制。つまり、実際に所有・運航を担っていたのは日本企業でしたが、表向きの登録はタックスヘイブン国家に置かれていたのです。
本来、日本にはタックスヘイブン対策税制※2があり、実体のない外国子会社などを通じて利益を逃がす行為には合算課税が行われます。しかし、外航海運という国際競争にさらされる業種では、制度的に適用除外とされるケースがありました。
※2 タックスヘイブン対策税制:日本国内の企業や個人が、租税回避を目的として税率の低い国・地域(いわゆるタックスヘイブン)に設立した子会社などを通じて所得を留保することを防ぐための税制。
船舶はその登録をした国に船籍があり、その登録した国の法律の適用を受けることになります。先進国の船会社の多くは、船舶の高い登録税および人件費の高い自国の船員の乗船を回避するなどの目的から、自国に船舶の登録を行わず、登録した船舶の規制の緩いパナマ、リベリア、マーシャル諸島などに登録を行っています。
船籍登録ランキングと各国の税制
下記は2024年の船籍登録ランキングに基づく上位8カ国の税制の特徴です【図表1】。なお、日本は第10位となっています。中国は便宜置籍船を認めていません。
[図表1]船籍登録ランキングと各国の税制 出所:『富裕層が知っておきたい世界の税制【大洋州、アジア・中東、アメリカ編】』(ゴールドオンライン新書)より抜粋
マーシャル諸島の人口は約3万8000人(2023年現在)で、日本の市町村と比較すると静岡県伊東市と同規模です。しかし、船籍登録数では世界第3位に位置しています。
