「自然豊かな場所で子育てがしたい」 「地域の人と、温かい関わりを持ちながら暮らしたい」
移住を考える時、そんな理想の暮らしを思い描く方は多いのではないでしょうか。
しかし、「仕事はどうするの?」「田舎特有の人間関係に馴染める?」といった現実的な不安が、一歩を踏み出すブレーキになってしまうことも少なくありません。
前編では、山梨県から「焼酎」をきっかけに移住し、孤独な日々から自ら動いて居場所を作っていった小林史和(こばやし ふみかず)さんの軌跡をご紹介しました。
後編となる今回は、移住から10年が経ち、ご結婚、そしてお子さんの誕生を経てすっかり地域に根付いた小林さんの「現在の暮らし」に迫ります。
協力隊の任期終了直前に襲った大ピンチをどう乗り越えたのか。そして、10年かけてたどり着いた「移住は愛だ」という言葉の真意とは。これから移住を考える方への、大切なヒントが詰まっています。
「夜泣きがやまびこになる」冠岳の自然に抱かれた、ストレスフリーな子育て
豊かな緑と清らかな水に恵まれた、いちき串木野市を代表する自然スポット、冠岳(かんむりだけ)。 小林さんは現在、冠岳エリアにある「住まい兼事務所」で生活をしています。
ーー子どもが夜泣きして外に連れ出すと、泣き声がやまびこのように山に響くんです。それくらい静かなんですよ。笑
星は驚くほど綺麗で、騒音もない。たまに遠くを新幹線が通り過ぎる音が聞こえるくらい。
「都会の集合住宅で、隣を気にしながら子育てをすることを思えば、冠岳で本当によかったと言い切れますね。」

地域の人たちも、「子どもの声が聞こえていいわよねぇ。」とポジティブに迎えてくれます。
まるで地域の宝物のように気にかけてもらえる環境。「泣き声で迷惑をかけていないかなぁ。。」と気を揉むことがないのは、親にとってこれ以上ない安心感だと思います。
とはいえ、いわゆる「不便な田舎暮らし」をしている感覚はないと小林さんは言います。
日常的に外へ出かけることも多く、高速のインターチェンジもすぐ近く。冠岳の圧倒的な自然の豊かさと、県内各地へのアクセスの良さ。その両方を享受できるのが、冠岳の暮らしの魅力です。

「え、無職になるの?」任期終了直前のピンチを救った、手作りの繋がり
すっかり地域に馴染んでいる小林さんですが、実は地域おこし協力隊の3年の任期が終わる2ヶ月前、突然「無職」になる瀬戸際に立たされたことがありました。
なんと、任期後の活動のために予定していた事業予算が、議会で通らなかったのです。
「あれは今でも根に持ってます。笑」と明るく笑い飛ばしてくれましたが、当時はまったく笑えない状況でした。

仕事がないなら、いちき串木野以外の世界を見てみるべきか。天秤にかけて悩んだ時期もあったそうです。
そんな絶体絶命のピンチを救ってくれたのは、他でもない「鹿児島で出会った人たち」でした。
「仕事、あるよ!」
地域の仲間たちから、次々とかかる声。
「友だちを作ろう」と自ら動き、紡いできたご縁が、大きなピンチを救ってくれた瞬間でした。あの夕陽の前で孤独に押しつぶされそうだった彼をこのまちに引き留めたのは、他でもない、鹿児島で出会ったみなさんの存在でした。

