世界の富裕層はどうなっているのか
では、世界全体ではどのような分布になっているのでしょうか。100万ドル以上の資産を持つ富裕層は、世界で約5608万4000人にのぼります(クレディ・スイス「グローバル・ウェルス・レポート2021」より)。国別の上位9カ国は[図表]の通りです。
[図表]100万ドル超の富裕層国別ランキング 出所:『世界の税金はどうなっているのか:富裕層の相続戦略シリーズ【国際編】』(ゴールドオンライン新書)より抜粋
このうち、相続税がない国は中国とオーストラリアです。また、カナダには日本のような相続税はありませんが、被相続人が死亡した時点で資産を時価で売却したものとみなす「みなし譲渡課税」が行われ、含み益に対して所得税が課される仕組みとなっています。
一方、中国には現在、相続税制度はありません。しかし近年、富裕層による資産の海外移転が増えているといわれます。その背景には、将来的な相続税導入観測への警戒に加え、資本規制の強化や不動産市場の不安定化、さらには国際的な情報交換制度の拡大などがあります。税負担そのものよりも、制度変更リスクや資産保全の観点から海外分散を進める動きが強まっているのです。
インドも現在は相続税を導入していませんが、過去には遺産税制度が存在しており、税制の将来動向を見据えた資産管理の必要性がしばしば議論されています。さらに、香港やシンガポールのように、相続税を廃止して外国富裕層を呼び込む政策を採る国も存在します。
※ 本記事は書籍の内容を抜粋・掲載したものであり、最新の法令・制度とは異なる場合があります。実務にあたっては必ず最新の情報をご確認ください。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
