アメリカ・バミューダ間の「保険所得租税条約」
バミューダは長年、所得税や法人税が存在しないタックスヘイブンとして知られてきました。ただし、2025年以降はOECDの国際課税ルールへの対応として、一定規模以上の多国籍企業に15%の法人所得税が導入されています。なお、個人所得税は現在も存在せず、給与税が主要な税収源となっています。
また、1986年にはアメリカとの間で「保険所得租税条約」が締結されました。これは、バミューダに設立されたキャプティブ保険会社が、アメリカを源泉地国として税務処理を行う際に適用される条約です。バミューダで課税されることは基本的に想定されていないため、条約により二重課税などを回避しています。
キャプティブ保険とは?
キャプティブ保険とは、企業が自社のリスクの一部または全部を引き受けるために設立する保険子会社のことです。キャプティブは、一般的な損害保険会社とは異なり、不特定多数の顧客を対象とせず、企業が単独、または企業グループで設立するものです。キャプティブは再保険の形式を取ることが多く、以下のような特徴があります。
キャプティブの主な特徴
●企業が自社のリスクを管理する手段として活用
●親会社や関連会社のリスクのみを対象とする
●一般的な保険市場の価格変動に左右されにくい
再保険とは、保険会社が引き受けたリスクの一部を他の保険会社に移す仕組みであり、リスクを移転することを「出再」、引き受けることを「受再」といいます。
キャプティブは、バミューダ、シンガポール、アイルランド、ルクセンブルク、アメリカ・ハワイ州など、キャプティブ保険業法が施行されている国・地域に設立されます。日本国内ではキャプティブの設立が難しく、多くの日本企業は海外にキャプティブを設立しています。
特に日本の保険規制では、国内の資産に対する賠償責任保険を直接海外の会社に付保することが禁止されているため、以下のような手順を踏みます。
●日本の元受保険会社がリスクを引き受ける
●日本企業(被保険者)は保険料を元受保険会社に支払う
●元受保険会社がリスクの一部をキャプティブに再保険として出再(リスク移転)する
この仕組みによって、日本企業は国内規制を順守しつつ、海外キャプティブの活用を実現しています。
※ 本記事は書籍の内容を抜粋・掲載したものであり、最新の法令・制度とは異なる場合があります。実務にあたっては必ず最新の情報をご確認ください。
矢内 一好
国際課税研究所 首席研究員
