「なんとなく進学」のツケと、社会が用意すべき「出口」
Aさんの事例は、単なる個人の金銭トラブルではない。複数の要因が絡み合ったことで「停滞」の現状がある。
まず、Aさん自身の選択に「主体的な覚悟」が欠けていた点は、厳しく指摘されなければならない。18歳という若さゆえとはいえ、目的意識の低い進学のために負債を負うリスクを軽く見積もりすぎた。そのツケが、いま、人生の選択肢を狭める足かせとなっているのは事実だ。
しかし、一方で彼女を責めるだけでは解決しない構造的な問題もある。日本の労働市場において、いまだに「大卒」が事実上の採用条件(フィルター)として機能している以上、学生は「進学しないことによる不利益」を避けるために、借金をしてでも大学へ行かざるを得ない。企業は大卒人材というリソースを安価に活用しながら、その獲得コスト(奨学金)には無関心を貫いてきた。
この「個人の覚悟の甘さ」と「社会の採用構造」の歪みが、いまのAさんのような停滞を生んでいるのだ。現在、注目を集めている「奨学金代理返還制度」は、この歪みを解消する一つの手段だ。企業が返済を肩代わりすることで、個人は挑戦への余力を取り戻し、企業は優秀な人材を確保できる。
奨学金が進学の助けになったという「感謝」を、その後の人生で「返済の恐怖」に変えてはならない。それを個人の失敗と切り捨てるのではなく、奨学金利用者のリテラシーを上げること、雇用と教育をリンクさせた「社会全体の出口戦略」として再構築すること。社会として向き合う視点が、停滞を打破する道ではないだろうか。
大野 順也
アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長
奨学金バンク創設者
