◆読書はガソリン。注ぐだけでは蒸発していく

「『本から学べば、今とは違う人生を歩めるのではないか』という希望を初めて抱きました。ずっとネガティブだった自分にとって、これまで持っていなかった全く新しい視点を与えてくれた一冊です」
そこから読書に没頭する日々がはじまる。自由になる小遣いのすべてを本代に充て、通勤時間はすべて読書に。休日も欠かさず本を読み、とにかく自分の中に知識を詰め込もうとした。
しかし、知識が増えても現実は1ミリも変わらない。彼はこの空回りを、独自の言葉でこう振り返る。
「自己啓発本を読むのは『ガソリン』を注ぐようなものなんです。読んだ直後はやたらと高揚感があって『やるぞ!』という気持ちになる。でも、ガソリンをいくら注いでも、それを動力に変える『エンジン』が回らなければ、車が前に進むことはありません。私にとってのエンジンとは、現状を変えたいという危機感や具体的な行動でした。知識という燃料があっても、エンジンを回して走らせなければ、ガソリンはただ現実に晒されて蒸発していくだけなんです」
◆「読んで満足」から脱却できた読書の方法とは
停滞期に終止符を打ったのが、本田直之著『レバレッジ・リーディング』との出会いだった。「読書は投資である」という教えに触れ、彼は本の読み方を根本から変えた。ぶっくまさんが「読んで満足する読書」を脱したのは、本の内容を実際の仕事に結びつけ始めてからだ。彼は自己啓発本だけでなく、SEとしての技術書や、弱点であったコミュニケーションを改善するための「話し方」の本も読み込んだ。
本から得た知識を単なる情報のままで終わらせず、具体的な行動へと変えていった。
変化は決して劇的なものではなかった。本人も「一気にではなく徐々にだった」と語る通り、数年という年月をかけて少しずつコミュニケーションに慣れ、仕事の精度を上げていったのである。
主体的に学び、行動する姿勢は着実に周りからの評価を変えた。課長やプロジェクトリーダーからも信頼を得るようになる。かつて能力不足と見なされていた現場でサブリーダーを任されるまでになったのは、ぶっくまさんが20代後半の頃だ。
その後も経験を積み、キャリアアップを求めて何度か転職する。ついには、企業の根幹を支える基幹システム全体のPM(プロジェクトマネジメント)を任されるまでになった。

