「うちは隣人との関係は、長年良好だったはずなのですが……」
川本優子さん(仮名・52歳)が経験した出来事は、家の代替わりをきっかけに潜んでいた問題が表面化してしまった典型的なケースだ。
◆隣家から突然「境界線を侵略しているのではないか」

「隣家の敷地はうちの3倍ほど、近所でも目立つ豪邸です。付き合いといっても、決して濃密なものではなく、会えば挨拶をする程度ですが、適度な距離感を保っていたと思います」
関係が悪いわけでもなく、約20年前、川本さんが出産のために実家へ帰省していた際に挨拶へ出向くと、隣家の奥さんは「家族で『赤ちゃんの声がするねえ、かわいいねえ』って話してたんですよ。気になさらないでくださいね」と温かく応じてくれたという。
その隣家に異変が生じたのは5年ほど前のことだった。それまでほとんど会話をしたことがなかった隣家の旦那——30年ほど前に娘さんが婿を取り、その男性が跡取りになっていた——が突然訪ねてきて、「そちらが土地の境界線を侵略しているのではないか」と言い出したのである。
◆祖母の代にも同様のトラブルがあった
川本さんによれば、祖母の代にも一度、似たような話があった。しかしそのときは「境界を越えていたのは隣家側で、祖母が譲歩する形で収めた」という経緯があった。それにもかかわらず、何十年も時が経った後に突然その話が蒸し返されたのだ。こちらも昔の図面を引っ張り出したものの、古い時代のものであるため製図が曖昧で、現在のように境界線が明確に示されているわけではなかった。
「隣家の旦那さんはその後も何度も家を訪ねてきては、『境界線上の庭にあるものを壊してほしい』と強く迫るようになって。さらには、これまでほとんどご近所付き合いをしていた形跡もない近隣住民にまで、『あの家が境界を越えている』と吹聴して回ったんです」

