ロエベ

ロエベの会場はヴァンセンヌ城。入り口にあったグリーンのギンガムチェック柄の、とても大きなパネルが目を引きました。これも今シーズンのテーマと何か関係あるんだろうなと思いながら中に入っていくと、客席に、イカや貝など海洋生物や犬のぬいぐるみ!


これらはケニヤのモンバサに生まれ、ドイツのケルンを拠点に活動するアーティスト、コジマ・フォン・ボニンの作品の数々です。オブジェでありながら、招待客と同じように座っている姿はどこかユーモラスでもあります。




ファーストルックはランジェリードレス。ラテックスで成形しているのだとか。そうかと思うと、極細のレザーの糸で編んだタータンチェックのセーターやドレスも登場。また、フォン・ボニンの作品でしばしば登場するギンガムの「ファウンド・ファブリック」も服のライニングとして使われています。そして、2026年にロエベ180周年を記念して登場したアマソナ180には、フォン・ボニンの造形作品を思わせる犬やヤドカリのチャームも。
クリエイティブ・ディレクターのジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスは、ロエベの長年の伝統である高度な技巧に現代性を持たせながら、常識にとらわれず、さらなる可能性を探っているように見えます。
イッセイミヤケ
イッセイミヤケのショーは、ルーブル美術館の地下にある「カルーセル・デュ・ルーブル」で行われました。会場には銀の砂が敷き詰められています。静かに登場するモデルたち。ファーストルックは白のドレス。そして光沢のある硬質のビスチェをつけています。このビスチェを見て瞬間的に、1980年代初めに、創業者である三宅一生さんが発表した赤のボディスを思い出しました。人体から鋳型をとって作ったプラスチック製のボディスは、80年代のボディーコンシャスなファッションを象徴するようなものでした。




© ISSEY MIYAKE INC
今回のビスチェはそのDNAを受け継ぎながらも、素材には越前の職人がすいた和紙が使われ、3Dプリンターで出力した型に幾重にも貼り合わせて成形した立体なのだそうです。さらに京都の職人がうるしを塗り重ねることで、今の時代が求める手のぬくもりのあるものになっていました。
コレクションノートには「つくり手として、どこまで『つくる』という意思をかたちに落とし込むべきか。あるいは、あえて手を加えないことの先にこそ、本来の美しさを見いだせるのではないか。今回のコレクションは、ものづくりにおける『作為』と『余白』の関係性を探究しています」と書かれていました。
「1枚の布」をベースにさまざまな質感の素材を使って、どこまで作り込んでいくのか。それとも引き算をしていくのか。このバランスはとても難しい。その加減ひとつで美しさは変わります。
今回のコレクションは、最新の技術と人の手が交錯し、実はたくさんの情報も盛り込まれている服でありながら、「引き算の美」が感じられるものでした。静かで穏やか。戦争のことも少しの間だけ忘れさせてくれるものでした。
