◆栄養ドリンクとエナドリ、何が違う?
ところで、栄養ドリンクとエナドリの違いはご存じだろうか。大まかにいえば、「タウリンが含まれているか否か」である。たとえば大正製薬の「リポビタンD」、佐藤製薬の「ユンケル黄帝液」、アリナミン製薬の「アリナミンV」などの栄養ドリンクにはタウリンが含まれており、薬機法において「医薬品」または「医薬部外品」に分類される。これは、病気に対する治療や緩和、予防効果が期待されることを意味する。
タウリンはアミノ酸から合成され、ホメオスタシスと呼ばれる“細胞を正常な状態に戻す作用”を持つ、生物にとって重要な物質である。特に肝機能に対して効果を発揮するとされ、胆汁の分泌や肝細胞の再生を促進するといわれている。
つまり、栄養ドリンクは医薬品または医薬部外品であるため、「滋養強壮」や「栄養補給」などと宣伝できる。
一方、エナドリは食品衛生法のもと「清涼飲料水」に分類される。要するに、コカ・コーラや三ツ矢サイダーと同じ扱いだ。
エナドリには栄養ドリンクのようにタウリンは含まれておらず、医薬品ではない(ややこしいが、海外製品には含まれている場合もある)。
その代わりに、「カフェイン」や「アルギニン」、あるいは「ガラナ」などが添加されている。
アルギニンは準必須アミノ酸の一種で、代謝を促進する効果があるとされ、この成分がリフレッシュ感をもたらす。
「アル中だったら、胆汁の分泌を促進する栄養ドリンクを飲んだほうがいいのでは?」
そう思うかもしれないが、栄養ドリンクはエナドリに比べておいしくない。毎日、嬉々としてストローをさして飲むようなものではない。それに容量も少なく、コストパフォーマンスも悪い。
なにより、毎晩ストロング系を5缶も飲んでいると、もはや「ファイト イッパーツ!」でも体は修復しないのである。
おそらく筆者の場合、深夜に何缶もストロング系を飲んでいるせいで脱水症状になっている。そのため、エナドリは一気にストローで水分補給するだけでもかなり楽になる。実際には、カフェインがアルコールの代謝を早めるわけではない。ただ当時の筆者には、脱水気味の身体に冷たい炭酸と糖分とカフェインを流し込むことで、二日酔いが軽くなったように感じられた。
「だったら、コーヒーを飲めばいいのでは?」
そう思われるかもしれないが、たとえ筆者がコーヒー好きであっても、エナドリと同じ量のコーヒーをがぶ飲みするのは辛いと思う。
◆子どもが飲みすぎて社会問題化
苦くてまずい栄養ドリンクを毎日1リットル飲むのは不可能だが、甘くてスッキリしたエナドリならごくごく飲める……。これが筆者だけではなく、多くの若者たちに受け入れられた結果、「魔剤」というネットミームが生まれるほど、エナドリは「疲労回復のための飲み物」としてのイメージが定着した。RPGにおける「ポーション」のような扱いだ。ただ、その結果、メーカーも予測していなかった小中高生までもが常飲するという問題も発生した。2010年代以降、子どもたちの間で、エナドリの飲み過ぎによる“心身の異変”が報告されるようになったのだ。
含まれる物質が問題なのか。たとえばアルギニンは、大人は体内で生成できる一方、子どもは十分に生成できないとされる。つまり、代謝を良くするための物質である。
ということは、アルギニン自体は有害な物質ではなく、よほど常識外れな量を摂取しない限り問題はない。ただ、成長ホルモンの分泌を促す作用もあるといわれているため、小さな子どもに過剰に摂取させるのは望ましくないといえるかもしれない。
一方、エナドリによるテンションの上昇といった覚醒作用は、主にカフェインによって引き起こされる。実はカフェインの過剰摂取は、心拍数の増加、動悸、めまい、不眠、震えなどの急性中毒症状を引き起こし、重症の場合は死に至る危険性があるのだ。体重が軽い子どもは特にその影響を受けやすいといわれている。
もっとも、エナドリという飲み物そのものが悪いのではなく、何日も徹夜している状態でエナドリを飲んだり、興奮状態で飲んだりすることで、身体に何らかの不調が現れるのである。
中には1日に2〜3本も飲んでいる子どももいるという。酒もそうだが、飲む量が過剰であれば、何であれ身体に良くない。健康にいいと言われている牛乳でも何リットルも飲めば、きっと体に悪影響が出るだろう。
コーヒーや酒など、大人が飲んでいるものは子どもには効きすぎるのだ。こうしたものは大人になってから、「身を滅ぼすため」に飲むのが楽しいのだから、子どもたちはまだギルティ炭酸「NOPE」などを飲んで騒いでいるほうが健康的である。

