◆バクバクさせること やめられない
入院直前の中島らもが、医者に引けを取らないほどアルコール依存症に詳しかったという逸話のように、筆者もエナドリの危険性を十分に理解したうえで、毎日2本もエナドリを飲んで心臓をバクバクさせていた。酒とタバコだけでなく、エナドリまで飲み始めたのは、当時仕事していた雑誌で「エナドリ飲み比べ」という企画を担当することになったからだ。
ここではレッドブルやモンスターだけでなく、当時存在していたサントリーの「アイアンボス」、大正製薬の「RAIZIN」、ZONeのヨーグルトフレーバー、そしてアムウェイの「XS」を飲み比べることにした。
企画自体は「時間をかけていい食レポ」のため容易だが、そのときの筆者は何本も締め切りを抱えており、「早くこの仕事を片付けなければ」という焦りがあった。その結果、どのメーカーも推奨していないエナドリの「二本重ね」を敢行してしまう。
正直、毎日ZONeを飲んでいてその効きはわかっているのだから、2本も一気に飲めばよからぬことが起きるのはわかっていた。それでも時間がなかったのだ。
こうして、レッドブルとモンスターを間髪入れず、それぞれ飲み干す。すると、5分も経たないうちに、言葉どおり心臓が「バクバク」と鳴り始めた。血流の巡りがよくなったのか、心拍数が上がったのだ。
こうなると、「頭がリフレッシュする」とか「眠気が飛ぶ」といったことはなく、冷や汗が止まらず、不安だけが増していく。
「マズいぞ」
心臓を針で一突きすれば、身体全体が破裂すると思うほどだった。
決められた用量を守らなかったため、ストロング系とタールの重いタバコで弱った筆者の身体に、カフェインやアルギニンが過剰に作用したのだろう。
◆命の危険を感じるも、結局その後も飲んでしまう
「ヤバい……。死ぬかもしれない」しかし、この日は飲み取材の予定もあったため、よせばいいのにさらに居酒屋に行ってアルコールを追加した。これは悪手である。
エナドリとアルコールの同時摂取は、カフェインの覚醒作用がアルコールの酔いを隠す。飲み過ぎ(急性アルコール中毒)や高濃度のカフェインによるめまい・震えを引き起こすため、非常に危険だ。農林水産省もこの組み合わせを避けるよう注意喚起しているほどである。だったら、「レッドブル・ウォッカ」ってなんなんだよ。
カフェインが酔いの感覚を鈍らせるため、自分の限界を超えて飲んでしまう。それに、カフェインを体内に取り入れることで体温と血圧が上昇し、血管が拡張する。そこへアルコールが入り込むと、身体は元気になったと“錯覚”するのだ。
幸い、筆者はもともと大酒飲みだったため、普段のキャパシティを超えるほどアルコールを摂取することはなかった。それでも、その日の飲み会では、ずっと心臓がバクバクと脈を打っていた。
さすがに、その心拍数の速さに命の危険を感じた筆者だったが、それでも酒ともエナドリとも距離を置くことはできなかった。これらを摂取しなければ、吐き気やめまいに襲われてしまうのだ。もはや、飲まなければ不調から逃れることはできない……。完全な依存症だ。

