◆ついに飲めない身体になってしまう
ダメだとわかっていながらも、あの日の体験が忘れられないため、1日に飲むエナドリの本数は2本に増えた。500ミリ缶なので、毎日1リットルを常飲するようになった。「エナドリを飲むことで、二日酔い気味の身体の血流の巡りがよくなり、どんどんアルコールも抜けていく気がする……」
当然、エナドリにそんな効果はないのだが、アルコール、ニコチン、カフェインにまみれた筆者の身体には通常の方程式は通用しなかった。
しかし、「二本重ね」の一件以来、エナドリを飲むたびに心拍数は日々速まっていった。胸を手で押さえる回数も増えた。
それでも、あるときから、いくらエナドリを飲んでも1時間も経たないうちに激しい吐き気に襲われるようになる。そこで、エナドリを飲まず、すぐさまストロング系に手を出すようになった。とうとう、カフェインやアルギニンだけではどうにもならない身体になってしまったのである。こうなってしまえば、エナドリは完全にお役御免だ。
こうして、筆者はエナドリを飲むのをやめた。アルコール依存症だったからこそエナドリを飲むようになったはずが、アルコール依存症がよりひどくなったことで、エナドリからは解放されたのだ。まったくもってポジティブな理由ではない。
そして、根本の原因だった酒をやめて5年ほど経った。酒同様、今はエナドリにも興味がない。
「あれだけ飲んでいたのに、いったいなぜ……?」
気づいたら、愛飲していたZONeは500mlから400mlになり、ボトル缶になっていた。物価高の影響かもしれないが、きっと以前よりも飲みやすくなったのだろう。
先日、早朝ロケがあった日、眠気を覚ますために久々にZONeを買った。
「あのときみたいに体をシャキッとさせてくれるだろう」
そう思ってボトルを開けた瞬間、ケミカルな果実のニオイがした。
「なるほど、これは匂うな」
<TEXT/千駄木雄大>※本記事は筆者個人の体験談です。エナジードリンクやカフェインの摂取について不安がある場合は、医療機関や公的機関の情報を確認してください。
―[今日もなにかに依存中]―
【千駄木雄大】
編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある

