◆両親の教えは自分を縛る“呪い”ではなかった

異国の地での生活を通して、髙橋さんは「自分にかかっていた“おまじない”が解けた」と振り返る。
「教師一家の娘として育ち、常に周囲を意識して生きてきたわけですが、インドでも『年長者に会ったら足を触って敬意を示す』『男性が食べ終わった後に女性が地面でご飯を食べる』といった独自の慣習がありました。
全く異なる二つの環境を経験したことで、『こうあるべき』という考え方は、実はどこにでもあって、それほど絶対的なものではないかもしれないと思えたとき、心がすっと軽くなったんです」
息苦しさを感じるほど、自分を縛っていたものが、実は“呪い”ではなく、「幸せに生きるための方法」を両親が必死に伝えようとしていた。そう気づいたとき、本当の意味で“自由”になれたと髙橋さんは話す。
◆「靴を見張る少年」が教えてくれた商売の本質

インドでは珍しい、一代でビジネスを大きくした起業家で、今でも“パパ”と慕うほどの存在だという。
「その経営者からは、『16歳で一人でインドに来るなんて、その時点で才能がある。絶対に起業した方がいい』と毎日のように言われ続けていました。当時の自分は、起業家に出会ったことすらなく、最初は何のことか分かりませんでしたが、その言葉は強く印象に残りました。
そして実際に商談の場へ連れていってもらい、現地でビジネスが動く最前線を目の当たりにする機会を重ねるうちに、“商売人”という存在が少しずつリアルなものになってきて。強い憧れを抱くようになっていたんです」
さらに、インドの街中にはたくさんの商売人がいて、その中でも印象に残っているのが「靴を見張ることで生計を立てていた少年」だと髙橋さんは語る。
「モスクは靴を脱がないと入れないんですが、観光客は盗まれるのが怖くて置きたがらない。そこでその子は、どこからか拾ってきた紐で靴をまとめて、『見張るよ』と言って100ルピー(約170円)を受け取っていました。英語も話せないような子どもが、自分なりのやり方でお金を得ていることに衝撃を受けて。
特別なスキルや肩書きがなくても、自分の頭で考え、その場で価値を生み出す。商売なんて自分にはできないと思い込んでいたのですが、ホームステイ先の経営者が『彼は立派なアントレプレナー(起業家)だよ』と言ったことで、『自分もやってみたい』という感情に変わったんです」

