都市部在住で迷惑をこうむる身近な生物としては、やはり「虫」だろう。不快感を覚えるだけならまだ序の口で、時には人間に牙をむく。最悪、死に至るケースもあるわけだから、今そこにある危機と言っても過剰ではない。
当記事ではこうした「身近に存在する怖い虫」の出現場所や対策方法などについて、害虫駆除・公衆衛生の関連事業を展開する株式会社ダイキチの平田克文さんに話をうかがっていく。これからの季節は虫も増加する季節なので、被害に遭わないよう参考にしてほしい。

◆「クマ」より年間死亡者数が多い「スズメバチ」
平田さんは直接被害のある害虫のほか、ゴキブリやハエなど不快害虫・衛生害虫も含めた駆除現場に長年携わるプロフェッショナルだ。まずは「危険な害虫」と聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるであろう、スズメバチについて尋ねてみた。「日本国内の動物災害で死者数が一番多いのって、実はスズメバチなんですよ。年間で20名ほど亡くなられていて、それこそクマの犠牲者数を上回ります」
スズメバチは大型種なら体長5cm以上にもなり、針の毒性とアナフィラキシーショック(二度刺されることによる強いアレルギー反応と、それによる血圧低下や意識障害)で恐れられる、危険害虫の中でも最強の存在だ。大きく丸い巣を作ることでも有名だが、主に警戒すべき出現ポイントはどこか。
「住宅の軒下や生け垣・石垣、街路樹や公園の茂み、遊具や小さい木橋の下などの、人目につきにくい箇所で主に巣を構築します。毎年9〜10月の台風で巣が落ちることも多いですが、その暴風域を耐えた巣はさらに巨大化して危険ですよ」
また、スズメバチの習性は極めて獰猛で、「クマの天敵」とすら称される。激しく動くもの、大きな声や音を出すもの、クマの体毛や日本人の頭髪のような黒いものが近くにいれば、躊躇なくターゲットにして襲いかかるのだ。
「顔の牙を噛みあわせて『バチバチ、ガチガチ』という威嚇音を立て、その直後に刺しにきます。つまり威嚇された時点で手遅れなので、そうなる前に騒がず静かに、姿勢を低くして、ゆっくり立ち去りましょう。彼らの『間合い』には絶対に踏み込まないでください!」
平田さんは実際にあった悲惨なケースとして、とある老人ホームでの死亡事例に言及した。
「車椅子に乗った高齢者と、それを押す介助者がスズメバチの群れに襲われたんです。介助者の方は何とか逃げたんですが、高齢の方が車椅子に取り残され、何度もスズメバチに刺されてお亡くなりに……さぞや無念だったでしょうね」
◆スズメバチに「自分で立ち向かう」のはアウト
スズメバチと遭遇した時は「逃げるが勝ち」と言っても、所詮は小さな虫。叩いて潰せばいいんじゃ? ……と考える人もいるかもしれない。だが、これは率直に言って自殺行為。スズメバチの飛行は人間の攻撃を軽々回避するほど素早いうえに、体構造も頑丈で軽い打撃ならば耐えてしまう。しかも危険はそれだけでないと、平田さんは説明する。「そもそも、スズメバチが1匹だけでいてくれる保証は全くありません。仕留めそこねたスズメバチがフェロモンなどを使って、周辺の仲間達を大量に『召喚』する可能性は十分あります。老人ホームのような事例に自分自身が陥りたくないなら、無謀はやめましょう」
ゴキブリではないが、1匹見たら30匹いる(と思え)ということだ。人間がスズメバチの大群に飲み込まれたら、とても太刀打ちできない。同様のリスクを避けるため、スズメバチの巣を素人が自前で撤去しようとするのも厳禁。ましてや、動画を撮ってYoutubeやSNSでバズらせようといったノリで「巣を割ってみた」「燃やしてみた」などは、周りの二次被害にも繋がりかねない愚行そのものである。
「対抗手段が唯一あるとしたら、ホームセンターなどで売っている対スズメバチ用の殺虫スプレーですね。射程が10mほどあるので、ハチ単体や小さな巣であればアウトレンジから仕留められます。しかし、スプレーも巣が中程度以上のサイズになると、1本だけでは駆除しきれない場合があり、そうすると生き残ったハチ達に返り討ちにされるのでやはり危険です」
平田さんのようなプロが安全にスズメバチを駆除できるのは、熟練した技術と知識を持ち、毒針を通さない防護服などでフル装備しているからだ。巣を発見したら、ネットや電話で手近な駆除業者に連絡するのが最善である。また、一部の地域自治体がスズメバチ駆除を代行してくれる場合もあるらしいので、役所に問い合わせてもよいだろう。繰り返しになるが、自分で触りに行くのは絶対NGだ。

