
高級車に乗って、良いマンションに住んでいる……そう聞くと「さぞ稼いでいるのだろう」と感じます。しかし、実際のところ、全員がそうとは限らないようです。個人事業主やオーナー社長に許された“羨ましすぎる節税スキーム”について、税理士・公認会計士で税理士法人グランサーズ共同代表の黒瀧泰介氏が暴露します。
年収1,200万円でも金欠?
街中でベンツのような高級車を乗り回している人を見かけると、「さぞかし高い給料をもらっているのだろう」と思いませんか?
しかし、実態は必ずしもそうとは限りません。むしろ、「収入(役員報酬)は月30万円しかない」という経営者のほうが、手元にガッツリと現金を残し、豊かな生活を送っているケースが多いのです。
では、なぜこのような逆転現象が起きるのでしょうか。その理由は、日本の税制における「累進課税」と「社会保険料」の重さにあります。
給料が上がるほど税負担が増える「累進課税」制度
会社が儲かれば、社長の給料を上げるのが当然だと思う人もいるかもしれません。しかし、日本は累進課税が採用されているため、役員報酬を上げれば上げるほど所得税や住民税、社会保険料の負担が跳ね上がります。
最高税率になれば55%と、収入の半分以上が国に持っていかれる。これが日本の現実です。
具体的な数字で考えてみましょう。年間1,200万円の役員報酬を受け取っている社長の場合、手元に残る金額(手取り)は以下のようになります。
・所得税・住民税:約200万円
・社会保険料(個人負担分):約130万円
■実質手取り額……約870万円(月額約72万円)
一般的には手取り870万円でも十分に高収入ですが、「都心のいいマンションに住みたい」「高級車に乗りたい」という場合、少し物足りなくなってきます。
仮に、家賃が月30万円(年間360万円)、高級車のリース代と維持費で年間300万円かかるとした場合、手取り870万円から660万円が消え、最終的に手元に残るお金は年間約210万円です。これでは、生活費を払うと手元にほとんどお金が残らない計算になります。
こうならないよう、賢い経営者は発想を転換し、個人の給料を上げるのではなく、「会社の仕組み」を使って可処分所得を最大化させているのです。
30万円の家賃が6万円に?
1.役員社宅制度
個人の手残りを増やす仕組みはいくつかありますが、そのひとつが「役員社宅制度」の活用です。
会社の仕組みをよく知る経営者は、自分名義(個人契約)でお家を借りません。会社名義で物件を契約し、それを社長に対して「社宅」として“貸し出す”形をとります。
ここでポイントとなるのが、税法における「給与課税」の扱いです。
役員社宅制度では、税法で定められた基準(物件の床面積や固定資産税の課税標準額など)に基づいて「賃貸料相当額」という法律上の家賃を算出します。
この金額以上を社長が自己負担として会社に支払っていれば、残りの家賃を会社が負担していても、給与として課税されることはありません。
そして、この賃貸料相当額は、実際の家賃相場よりも低くなるケースがほとんどです。物件の広さなどによりますが、おおむね相場の50%、狭めの物件であれば20〜30%程度の負担で済むことも珍しくないでしょう。
つまり、家賃が月30万円の物件であっても、社長の個人負担は月6万円程度で済ませられる可能性があるということです。
そして、差額の月24万円は会社の「経費(地代家賃)」として計上することができます。
このように、役員社宅制度は個人の負担を減らしつつ、会社の経費を増やせる一石二鳥の仕組みなのです。
ただし、やりすぎには注意しましょう。たとえば、あまりに豪華すぎる家に住んでいる場合(床面積が240m2を超える、プールやシアタールームが付いているなど)は、税務署に「社長の個人的な趣味・贅沢」と見なされ、経費性が否認されて全額自腹(給与課税)になるリスクがあります。
常識的な範囲内、家賃30万円程度の“ちょっといいマンション”であれば問題ないでしょう。
