◆都心の複合再開発、なぜ「ガラガラ」と言われるのか?
それでは、この両施設はなぜ「ガラガラだ」と言われやすいのだろうか。一番に挙げられる理由は、オフィス主体施設ならではともいえる「“余白”を重視する設計思想」だ。
従来の商業施設主体の再開発では「できるだけ多くの来館者を滞留させること」が重視される。一方、今回取り上げたようなオフィス主体の施設では、「勤務者の快適性」が最も重要となる。そのため、平日のピーク時であっても、「長蛇の列ができない」「座席に余裕がある」「通路をスムーズに歩ける」程度の“余白”ともいうべきものを確保することが施設の価値向上につながる。
また、オフィス主体の施設は、一般的な商業施設が最も賑わう「休日昼間」に相対的に人が少なくなりやすい。そのため、「周辺は混雑しているのにここだけ空いている!」という光景は、SNS上では強いインパクトを持って拡散されやすいのであろう。
そしてもう1つの理由として、「賑わう時間帯の分散化」も挙げられる。
たとえば、グラングリーン大阪南館の地下にあるフードコート型の飲食ゾーン「タイムアウトマーケット大阪」は一般的な飲食ゾーンとは異なり、平日のオフィス勤務者などの需要よりも、インバウンドも含めた「観光客需要」「ナイトタイムエコノミー」を強く意識した施設。同館の高層階には高級ホテルもあり、宿泊者の利用も見込んでいる。そして、渋谷サクラステージも、平日昼間に多く利用されるカフェやクリニックモールと、バーや居酒屋といった夜間需要を意識した飲食店エリアが分かれている。
つまり「平日昼間に賑わう場所」「夜間や週末に賑わう場所」「観光客が多い時期・時間帯に賑わう場所」がそれぞれ施設内で分散しているのである。その結果、施設全体として常時「人で溢れる」状態には見えにくいのだ。
◆「移動の途中で利用する」ことが前提に

グラングリーン大阪は「まちと公園をつなぐ地域のハブ」を掲げ、大阪駅(地下ホーム)や福島エリアから再開発が進むうめきたエリアへと人を流す“都市の通路”としての役割を担っている。
また、渋谷サクラステージも、坂道や路地が多かった桜丘エリアを再編した再開発であり、渋谷駅から桜丘方面への“都市の通路”の1つとすべく、館内には高さが違う土地の往来を便利にするための立体的動線「アーバン・コア」が設けられている。
つまり、両施設とも「滞留型ショッピング施設」とは異なり、「街と街を繋ぐ機能」を強く持つ施設なのだ。そのため、下層階の商業エリアは「館内で立ち止まって長時間過ごす」よりも、「移動の途中で利用する」ことが前提となっている街区が少なくない。
最後に、個人的に挙げたい理由が、ここ最近の「都市部の混雑化による感覚マヒ」だ。
近年の都心エリア――渋谷や新宿、また梅田や心斎橋・道頓堀などは、つねに「超高密度」であることが当たり前だ。
それゆえ、都心の駅チカ一等地で「少し余裕がある」「座席が空いている」「通路を快適に歩くことができる」場所を見かけると「ガラガラだ!」という風に思えてしまうのではないだろうか。

