小さな町の難しさと、それでも好きな理由

石見銀山の町は、人と人との距離がとても近い場所です。幼い頃から生まれ育ったコミュニティで、仕事もプライベートも近い人が多い。そのぶん、良いことばかりではありません。
「狭いコミュニティなので、難しいこともあります。小さい頃は古いしきたりも残る地域なので人の目もあったし、自分が親になったら今度は子ども同士のいざこざが起きたりもするし」
人との距離が近い町だからこそ、息苦しさを感じることもあったと言います。それでも、この町が好きだと由紀子さんは言います。
「この町は、住民の集まりであるというのが面白いところ。住民たちで、この町をよくしようという気運があります。とはいえ閉鎖的な雰囲気はなくて、観光客や移住する人も多いので、ウェルカムな雰囲気なんです。
町並みを歩いていても誰とでも気兼ねなく、「どこから来たの?」と自然に話が始まったりするのを見ると、ほっとします」
そして、この町には日常の中の小さな楽しみもあります。
例えば初夏の蛍。
「蛍の季節になると、ちょっと外に出て裏手の川に家族で見に行きます。すごくキレイで、うっとりしてしまいます。で、ふと隣を見ると、ご近所の家族も蛍を見に来ている。
ああ、同じようにこの美しい瞬間を楽しもうと感じる人がこの町にいるんだと思うと、いいなあってグッとくるんです。この町は、そういう何気ない時間がすごく豊かなんです」
人とのつながりや、日常の小さな出来事。そんな時間の中に、この町の豊かさがあるのだといいます。
「この町が好き。その思いを胸に、私は私らしく、新しい群言堂の次のフェーズに進んでいけたらいいなと思っています」
「足元の宝」は、娘の中にも受け継がれて
登美さんが大切にしてきた「足元の宝」を見つめる感性は、知らないうちに由紀子さんにも受け継がれているのかもしれません。
やりたいことを思いきり形にしていく登美さん。
その歩みを支えながら、自分の役割を見つけていく由紀子さん。
主役になる人もいれば、誰かを支えることで輝く人もいる。
「母と同じ“主役”じゃなくていい。私は私のやり方で、自分の人生をちゃんと楽しんでいけたらいいなと思っています」
そう語る由紀子さんの穏やかな言葉には、“自分らしく生きること”の信念が、静かににじんでいました。
「遊ぶ広報」で自分らしい生き方・働き方探し

『遊ぶ広報』は、暮らすように13泊14日でまちに滞在しながら、町の魅力をSNS発信すると7万円の滞在費が補助されるというプログラム。石見銀山を擁する島根県大田市では、6月以降に募集開始の予定があるそう。
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取材・文=長倉志乃(HALMEK up編集部) 撮影=林 ひろし

