投資で成功した祖父が、孫の“全振り投資”を止めた謎
健太さんは驚きました。投資で成功した祖父が、なぜ止めるのか。
「私のは20年かけてやったことだ。おまえは、25歳の今を犠牲にしてるだろう。そこまで無理をして。枠を埋めるのが目的になってないか?」
健太さんは、言葉に詰まりました。確かに、毎月積み立てるたびに達成感はありましたが、生活の充実感は薄れていく一方でした。1,800万円という数字に追いかけられて、25歳の楽しみを全部削っている。そう言われれば、その通りでした。
「サンクコスト」という見えない罠
行動経済学に「サンクコスト効果(埋没費用の罠)」という言葉があります。 「もうここまでやったんだから……」と、過去の努力や時間が惜しくなり、本当はやめた方がいいことでも続けてしまう心理です。
健太さんはまさに、この状態でした。 半年間、飲み会も趣味も我慢してきた。今さら積立額を減らしたら、これまでの努力が無駄になってしまうんじゃないか。投資をしている周りに置いていかれるのではないか……。
でも、本当に無駄になるのは、「25歳という時間」そのものなんじゃないか? ――健太さんは祖父にこの気づきを話しに行きました。すると、清さんは、笑ってこう言ったといいます。
「私が資産を作れたのは、投資が上手だったからじゃない」
清さんが20代だった頃は、まだ給料も安く、情報もない時代でした。それでも、友人と朝まで議論し、知らない街を歩き、本を読み漁り、たくさん失敗した日々があったといいます。その頃に身につけた「自分の頭で考える癖」と「人とのつながり」こそが、後にバブル崩壊やリーマンショックで逃げ出さずに済んだ本当の理由でした。
「市場は荒れる。AIで仕事も消える。そのときおまえを救うのは、NISAの残高じゃないよ。投資を早く始めること自体は悪くないから、適切な金額をもう一度考えてみたらどうか」
結局、健太さんは、月10万円の積立を3万円に減らすことに決めました。差額の7万円は、テニスのコーチ料、本代、たまの旅費、友人との食事に。リボ払いもすぐに完済したといいます。
