◆濡れた髪から水飛沫が「信じられないくらい脂臭い」
「急に私のほうを向き、ギロっと睨みつけられてしまいました。出演者たちが壇上に上がり始めたタイミングだったので、素知らぬフリをしましたが、すでに怖かったです」A子さんは拍手の際は息を止め、手を叩いたというから、物悲しい。
「基本的にはハンカチを当てつづけていました。それでもトークで笑った瞬間などには防ぎきれず、軽くえずいてしまうほどのニオイだったのです」
この時点で十分すぎる災難だが、これだけではなかった。
「えずいて3度目くらいのときですかね。濡れたぼさぼさの長髪を、ばさっと払うような動作をしはじめたんです。私のいる、右側に向かってだけ。最初は手癖かなと思ったのですが、私がえずく度に繰り返すので、悪意があることを途中からは確信しました。ビショビショだから私に水飛沫がかかるのはもちろんのこと、頭皮じゃなくて毛先なのに、信じられないくらい脂臭くって……」
◆上映終了後に絡まれてしまう
そうなると、A子さんが余計にむせてしまうのも当然の帰結だ。「しばらくして、トークも終盤に入った頃には、私の靴やバッグを蹴ったり踏んだりするようにさえなりました。偶然かのように動いていましたが、そもそもトークや上映のあいだにそこまで動くこと自体が迷惑ですよね。そもそも靴は下ろしたてだったし、バッグもお気に入りのもの。邪魔にならないように足元には置いたものの、小ぶりなハンドバッグを足蹴にされるとはまさか思いもしていませんでした」
執拗に攻撃される恐怖を抱きつつも、これ以上汚されまいと、荷物とともに身を反対側に寄せたA子さん。
「脚を大きく広げたり組み替えたりしながら、蹴ったり踏んだりの攻撃が続きました。逃げたくなるくらい怖かったのですが、すでに上映も始まっており、途中退席してほかの人に迷惑をかけるのも気が引けて……。そもそも、服を新調さえするほど楽しみにしていた作品でもありますから、結局最後まで映画は観ました。全然頭には入らなかったのですが」
そうして試写会が終わり、順次退席の時間となった。
「なにか言われたら怖いと思い、そそくさと逃げるようにドアを出ました。すると付けてきたのか、男性に後ろからグイッと肩を掴まれたんです。『お前がゲホゲホうるさいから全然集中できなかった。せっかくの試写会が台無しになったんだから、損害賠償はして当然ですよね?』みたいなことを言われて……」
「みたいな」というのは、声が小さいうえに滑舌がはっきりしなかったために、あまりよく聞き取れなかったからだと、A子さんは補足してくれた。
「もはやここまで来ると恐怖を超え、呆然とフリーズしてしまったんです。その間もうだうだと言っていたのですが、頭には入ってこず……」
そこに現れた女性がひとり。
「気がつくと私の代わりに相手に対峙して、『私は彼女の隣に座っていたから、すべて知っていますよ。実際に迷惑をかけていたのはあなたです。それでも話があるなら、スタッフのもとに3人で行きましょうか』と言ってくれたのです」
第三者の視点をぶつけられた男性は……。

