俳優の市毛良枝さん(取材時75歳)。柔和な笑顔が印象的ですが、40代で登山、還暦前に社交ダンスを本格的に始めたアクティブな一面もあります。母親の介護も経験する中で、年齢や状況に合わせて歩幅を変えながら、一歩踏み出すコツを伺いました。
市毛良枝(いちげ・よしえ)さんのプロフィール
1950(昭和25)年静岡県生まれ。文学座附属演劇研究所、俳優小劇場養成所を経て、71年ドラマ「冬の華」でデビュー。俳優としてドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。登山、ヨガ、社交ダンスなど多彩な趣味で知られ、執筆や講演も多数。NPO 法人日本トレッキング協会理事を務める。近年の出演作に映画「正直不動産」、ドラマ「終活シェアハウス」「無用庵隠居修行」シリーズなど。近著に『百歳の景色見たいと母は言い』(小学館刊)
ドラマや映画での「年を取ったら不幸」という描かれ方に違和感

44年ぶりに主演した映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』(2025年公開)で、市毛さんが演じたのは、夫を亡くしてから、孫と同じ大学に通い始める祖母の役。若い頃の夢だった“学び”を謳歌する一方で、こじれていた娘との関係や老後の問題と向き合っていきます。本作への出演を決めた理由を、市毛さんはこう語ります。
「私が若い頃は、ドラマや映画の現場に大先輩がたくさんいて輝いていたんですね。でも今は、若い人が中心の作品が増えたからか、私たち世代にくる仕事は、何か不幸を背負った“かわいそうな人”の役ばかり。『年を取ったら不幸』という描かれ方にずっと違和感を持っていました。
でもこの役は、夫を亡くして落ち込みながらも一歩前へ踏み出す女性です。夫が元気だった頃は考えなくても済んだ問題に対峙しなきゃいけなくなって、悩みながらも、もう一度自立していくお話で、やらせていただいてよかったなと思っています」

