◆「1次審査合格」の時点で退社を決意
――63ANGELに入ろうと思ったきっかけはどのようなものでしょうか。もね:SNSで存在を知って、サークル時代の友人を私が誘って見に行ったんですよね。あのときの私の頭のなかでは、ダンスで生きていこうと思ったらプロダンサーか振付師しか選択肢がなくて……。でもショーをみて、みんなすごく格好良くてセクシーで、魅了されてしまったんです。それで、友人に「来週も行こう!」と(笑)。気がついたら夜行バスでまた来ていました。
――ダンサーになるにはオーディションが必要ですよね。
もね:そうなんですよ。審査は1次〜3次まであるのですが、1次審査合格の連絡を電話でもらったんです。そのとき「きっと私はここでダンサーになるな」って直感的に思って。それで、上司を呼び出して「東京でダンサーとして働くための1次選考に受かったので、会社を辞めます」と言いました。
――すごい度胸! 上司はどんな反応でしたか。
もね:「は?」という感じでした。かなり驚いていました。「まだ1次でしょ? 本当に合格してからでも遅くないんじゃない?」と。
――僭越ながら、私も上司の方と同じように思います(笑)。
もね:営業先の顧客をかなり抱えていたので、いきなり「来月辞めます」とすると、引き継ぎが間に合わないと思いまして……。それは会社に迷惑がかかるので、辞めようと思ったときに伝えるのが誠意だと思いました。
◆「技術で及ばない」けど…さらなる飛躍を誓う

もね:母にはLINEしました。「ちょっと意味がわからないから、落ち着いたらあとで電話して」と言われたと思います。かなり呆れていましたが、私がやりたいことをやってしまう性格なのを知っているので、そこまで強硬に反対はされなかったですね。もちろん、賛成もしていませんでしたが。でも、今は頑張りを認めてくれていて、イベントに来てくれるんです。
――晴れてダンサーとして合格して、はや5年になるわけですが、今後の展望などあれば。
もね:同じ舞台に立つ女の子のなかには、幼い頃からダンスをやっている上手な子がたくさんいます。私はダンスに対する愛情はあるけど、技術で及ばない部分がある自覚もあります。ほかにも、お客さんとのコミュニケーションにおいてもまだまだ学ばなければならないことが多いと思っています。いま、こうして好きなダンスを仕事にできることに感謝して、少しでも自分のスキルを磨いて、もっと中央に近いところで踊れる存在になれたらいいな、とは思っています。
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コミュ障の自認があるともねさんは言う。けれども、その飄々とした語りに惹き込まれる人は少なくないだろう。周囲への気配りができ、全体を俯瞰の視点で捉えられる強みもある。その長所がたまに引き起こす暴走もスリリングで釘付けにする。
理性的でほんわかした彼女の笑顔に時おり宿る、ダンスと心中するかのごとき狂気が最高に爽快でいい。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

