
「金融資産1億円以上、5億円未満」が富裕層の定義です。最近では、NISAを活用した長期積立投資や株高の恩恵で、普通の会社員が「いつの間にか富裕層」へ仲間入りするケースも少なくありません。そのなかにはFIREを夢見る人もいるようですが、安易にFIREを選択してしまうと想定外の事態に陥ることもあります。憧れのFIRE生活を手にした43歳男性の事例をもとに、CFPの山﨑裕佳子氏が解説します。
長期投資と仮想通貨で〈資産1.2億円〉…40歳会社員が「いつの間にか富裕層」に
現在、食品メーカーのシステム管理部で働くワタルさん(仮名・43歳)。一見するとごく普通の会社員ですが、実は3年前の40歳のとき、資産1.2億円を手に念願の「FIRE」を達成し、一度は会社を辞めた過去を持っています。
ワタルさんは一体、どのようにして巨額の資産を築き、なぜ再び働き始めたのでしょうか。
ワタルさんの実家は東北地方にあり、都内の大学に進学したのを機に一人暮らしを始めました。そのまま都内で就職し、以来、賃貸マンションで一人暮らしを続けています。
ワタルさんは家事全般が得意で、とくに料理にはこだわりを持っています。そのため、付き合い以外で外食することはほとんどありません。毎日の自炊もまったく苦ではないそうです。
趣味は読書とジョギング。他にお金のかかる趣味はありません。出勤時の服装も自由だったため、被服費は必要最低限しかかかりません。そのため、毎月収入の4割くらいは貯蓄に回っていたそうです。
そんなワタルさんは25歳のころ、普通預金で眠らせておくよりも有効に活用したいと考え、投資を始めることにしました。なにか明確な目的があったわけではありません。強いていうなら「将来のため」という漠然とした動機でした。
最初は預金の一部で、投資信託や個別株を買いました。NISA制度が始まってからは、毎月一定額を積立投資に回し、ボーナス時には、追加資金で個別株やREITなどにも投資をしてきました。これまでに何度か資産の評価額が下がる局面もありましたが、結果的には持ち直して資産額は順調に増えていきました。
数年前のこと。職場の懇親会の席で隣り合った同僚から「仮想通貨で儲けた」という話を耳にしました。その話が頭のどこかに残っていたワタルさん。その後、コロナ禍に突入し、時間に余裕ができたころ、思い立ってある仮想通貨を300万円購入したのです。
その数年後、仮想通貨を高値のタイミングで売却し、9,000万円ほどの大きな利益を得ました。仮想通貨の売却益は雑所得となり、所得税と住民税合わせて最大55%が課税されます。
ワタルさんのケースでは、5,000万円近い税金を払うことになったため、手元に残ったのは4,000万円ほどでしたが、株や投資信託など8,000万円の資産と合わせると、保有資産は1.2億円に達していました。
明日から一生無職だ!…念願の「FIRE生活」をスタート
思いがけず資産が増えていることに気がついたワタルさんは、「もう頑張って働かなくても、生きていけるのでは?」と、ある考えが頭をよぎりました。それが、いわゆる「FIRE生活」です。
FIRE(Financial Independence, Retire Early)は、日本語で「経済的自立と早期リタイア」と訳されます。アメリカで広がった考え方ですが、日本でも数年前から投資家の関心を集めており、働き方を見直したい人に注目されています。
簡単にいえば、「生活費を労働収入に頼らず、資産の運用益で賄える状態にして、勤労から早期に卒業する」というもの。たとえば、ワタルさんの年間の生活費は400万円。年4%程度の運用利回りを前提にすると、理論上は約1億円(400万円÷4%)の資産があれば、運用益だけで生活できるという考え方です。
仕事に悩んでいる時期とも重なり、日に日にFIRE生活への憧れが強くなるワタルさん。数ヵ月悩んだ末、とうとう「明日から一生無職だ!」と宣言してFIRE生活をスタートさせたのです。
