無職だと住宅ローンも組めない…資産が1.2億円あっても「幸せとは程遠い生活」
FIRE生活をスタートして2年くらいは、時間に束縛されない自由な日々に満足していたワタルさんでしたが、徐々に時間を持て余すようになります。
会社を辞めた当初は、ワタルさんのFIRE生活について興味本位で話を聞きにやってきた友人たちも、いまではほとんど会うことがなくなりました。彼らは会社で要職に就いており多忙で、家族もいれば、ワタルさんに割く時間はそうそうありません。
また、最近、ショックなこともありました。賃貸マンションの更新時期が近づいていたため、思い切ってマンションを購入しようと思い、金融機関に住宅ローンの申請を行うと「無職」を理由に断られてしまったのです。
「資産はあるのに、無職だとローンも組めないのか……」と、自分の社会的評価の低さに愕然としました。加えて、父親からも、「働かずに遊んで暮らすとはなにごとだ」と叱責され続けています。
そんな状況下で、ワタルさん自身も社会からの疎外感と孤独感を抱え、まるで“死んだ魚のような目”をして過ごすほど、気持ちが沈むことが多くなりました。
お金の面では悠々自適なはずなのに「幸せではない」ことに気がつき、FIREから3年後、再就職に動き出したのです。
ところが、IT業界は日進月歩の世界。3年間のブランクは大きく、思うように就職先が決まりませんでした。そのため、IT業界はあきらめ、食品メーカーのシステム管理部へ就職することに。
希望の職種ではありませんが、いまは、社会の一員であることを実感する毎日に喜びを感じています。
「4%ルール」は机上の空論?…FIREに潜む5つのリスク
FIREに憧れを抱く人がいる一方で、実現後に「こんなはずではなかった。思っていた生活と違っていた」などと感じる人も少なくありません。資産が目減りしていく不安から、精神的な豊かさを感じられなくなることも要因のひとつのようです。
FIREで一般的に用いられる「4%ルール」をご存じでしょうか。たとえば、利回り4%を前提とすると、年間生活費300万円の人であれば7,500万円、生活費が400万円なら1億円、500万円なら1.25億円の資産があれば、資産を減らすことなく生活できるという考え方です。
ただし、この考え方は理論上のものであり、当然4%の保証はありません。実際にはさまざまなリスクが存在します。
1.資産が減る不安
FIREは、その後一生資産が減る不安と付き合い続けなければいけません。投資資産には必ず価格変動があります。株価暴落で資産が大幅に目減りしたとき、想定していた運用益を得られなくなるため、資産を取り崩すペースが早まります。
2.インフレ問題
いまは、300万円~400万円で年間生活費を賄えていても、この先、物価が上昇すれば生活費は不足することが考えられます。物価上昇率に見合った利回りが期待できなければ資産の目減りスピードは加速します。
3.社会保険や税制上のデメリット
会社を辞めることで生じる、社会保険や税制上のデメリットもあります。会社員時代は厚生年金や健康保険は会社側が半分を負担してくれていましたが、退職すれば、国民年金や国民健康保険は全額自己負担です。将来の年金額にも影響します。
4.医療費や介護にかかる費用
将来の医療や介護にかかる費用も、けっして無視できません。年齢を重ねれば病気や介護のリスクは高まります。いまは十分な資産があるように思えても、長生きによる「お金が足りなくなるリスク」は常につきまといます。
5.精神衛生上のリスク
仕事を一生懸命してきた人ほど、退職して急に時間ができると「毎日、なにをすればいいかわからない」という悩みを抱えやすくなります。お金の問題だけでなく、仕事を辞めたあとの生活イメージがあるのか、仕事以外の生きがいを持っているのかという点は重要です。
