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NISAなんてこりごりだ…退職金1,500万円で投資を始めた年金30万円・69歳夫、スマホを凝視したまま硬直。2年後、唇に血を滲ませながら「全額現金に戻した」理由【FPが解説】

NISAなんてこりごりだ…退職金1,500万円で投資を始めた年金30万円・69歳夫、スマホを凝視したまま硬直。2年後、唇に血を滲ませながら「全額現金に戻した」理由【FPが解説】

毎日スマホアプリを確認するのが習慣になり、一喜一憂する日々。老後に始めた新NISAが、いつの間にか69歳男性から老後の平穏を奪い去っていました。投資で、「決してやってはいけないこと」とは? 本記事では、Aさんの事例とともに無理のない資産運用を探っていきます。※個人の特定を防ぐため、事例は一部脚色しています。

定年後の虚無感、ありあまる時間の使い道

Aさんは、4年前に中堅商社を定年退職した69歳です。40年以上も懸命に働き、部下からも幹部からも厚い信頼を寄せられ、「あの人はいつ家に帰っているのだろうか」といわれるほど、人生の多くの時間を会社に費やしてきました。現役を退いてからは、もう始発電車に乗って通勤する必要もありません。現在は、同い年の妻と2人、夫婦合わせて月約30万円の年金で静かに暮らしています。

これといった趣味はありませんでした。毎朝7時に起きて1時間のウォーキングをしたあとは、特にやることがなく、一日中新聞を読んだり、テレビを見たり。ヒマ過ぎて書き込んでいたネットニュースのコメント欄は、度重なるAさんの暴言が原因でいまや書き込みを禁止されています。退職後に始めたSNSでは、有名人の投稿に身勝手な意見を何度もぶつけ、誹謗中傷にあたるとして弁護士から連絡がきたことすらありました。現役時代はあれほど充実した毎日を送っていたのに、退職後は自分が本当に存在しているのかさえわからなくなる日があるそうです。

そんなとき、テレビであるニュースを見かけました。2024年、新NISAが始まったという報道です。そういえば以前、元職場の後輩が「ぼく、NISAでお金増えてますよ」という自慢をしていたなと思い出します。

さらに、現役時代の同期が集まる飲み会でも「数年前からやっているが、もう350万円の含み益になった」と誰かが胸を張っていました。そんなにNISAはお得なものなのかと思いつつも、Aさんは投資を一度もしたことがありません。金融商品全般に興味がなく、生命保険すら一度も入ったことがないほどです。

そんな彼が気になったのは、NISAをやっているという人たちがみな、一様に得意げな講釈を垂れること。まるで自分が専門家であるかのように。SNSを開けば、同じような雰囲気の人たちがたくさんいます。聞かれてもいない解説を延々と繰り返し、己の賢さに酔いしれているかのように見えました。

Aさんは、それがどうしても許せませんでした。「調子にのって饒舌になっている滑稽なやつらだ。だが、あいつらにできて俺にできないのは癪に障る。この有能な俺に」と対抗心を燃やします。

Aさんの自意識は人一倍高く、他人にできて自分にできない局面があることを異常に嫌がる性質でした。商社マンとして長年、数字を読み、人を読み、局面を読んで仕事をしてきた自負があります。定年後も新聞は毎朝欠かさず読み、常に世界情勢を把握してきたつもりです。「まったくの素人でもないのだから、俺が勉強したら投資なんて簡単だろう」そう考えました。

誰にもいわず、投資デビュー

Aさんはネット証券会社で口座開設の手続きを進めるあいだ、毎日投資について勉強をしてみました。そこで彼が行き着いたのが、米国の超巨大ハイテク企業10銘柄に集中投資する「iFreeNEXT FANG+インデックス」です。

世界中に薄く広く分散するオルカンのような退屈な平均点など、有能な俺が選ぶわけがない。そう見下していたAさんにとって、FANG+の構成銘柄は魅力的に映ります。

マイクロソフト、アップル、エヌビディア、メタ……。ニュースの主役であり、現代の世界経済を支配するトップ10企業の顔ぶれを見た瞬間、元商社マンとしての血が騒ぎ、深く納得しました。「局面を読むなら、これしかない。これこそが勝者のポートフォリオだ」と。

「とりあえず始めてみないと掴めないな」と考え、口座開設と同時に、退職金を含む手元資金4,000万円のうち1,500万円を一括投資しました。ただし、FANG+は「つみたて投資枠」対象外の、成長投資枠限定のファンドです。そのため、初年度の非課税投資上限である240万円だけをNISA口座に入れ、残りの1,260万円は特定口座に流し込みました。積立ではなく、あえて一括で。「少しずつ入れるより、余裕資金があるなら早く入れたほうが複利が効く」とネット記事で読んだからです。

誰かに直接教えを乞うのは好まないので、誰にも相談しませんでした。「有能な俺が、投資ごときで誰かに相談するなんてみっともない」というプライドが強く働いた結果です。

「俺は俺の判断しか信用しない」。Aさんはそういう性格なのです。会社員時代は会社という大きな傘の下で守られていたので、強気な態度でも生きていくことができました。しかし、誰からも守られない個人投資家の世界で、不遜な態度がどのような結果を招くのかなど、当時の彼には知る由もなかったのです。

もちろん、妻にさえ相談していません。増えてから、さりげなく伝えればいい。「実はコツコツ運用していたんだ」と、資金が倍増したのを見せたら、妻はまた自分を褒めてくれるだろう。そんな姿を想像していました。

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