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NISAなんてこりごりだ…退職金1,500万円で投資を始めた年金30万円・69歳夫、スマホを凝視したまま硬直。2年後、唇に血を滲ませながら「全額現金に戻した」理由【FPが解説】

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2024年8月5日、令和のブラックマンデー

Aさんはその夏、血の気が引く思いを味わうことになります。日経平均株価が4,451円下落。1987年のブラックマンデーを超える、史上最大の下落幅を迎えたのです。

「日本株の話だ。米国株を持っている自分には、直接関係ない」。——胸のざわつきを抑えながらそう自分に言い聞かせましたが、毎朝の習慣でアプリを開いた瞬間、彼の指が凍りつきました。

急激な円高と米国株急落のダブルパンチが、ファングプラスを容赦なく引きずり下ろしていたのです。1,500万円が、1,290万円にまで崩れ落ちていました。わずか1週間で、210万円の損失です。

状況を確かめようとアプリを何度も開いているうちに、画面には「アクセスが集中しております」というエラーメッセージが表示されるように。「自分の金がいま何円になっているのか、それさえ確認できない」。焦燥感が、恐怖をさらに増幅させました。

SNSには「終わった」「全部売った」という投稿が溢れ、テレビでも「ブラックマンデー超え」と繰り返し報じます。AさんはSNSに投稿する気にもなりません。少しだけ覗いてみると、自分のことを「おじいちゃん無言w」と揶揄する人が大勢いるようでした。

下落のことは、妻には話していません。アプリを開き、また数字を確認しました。一人で耐えるしかありません。

結果として破滅に繋がった、秋の回復

幸運にも、2024年秋には市場が回復しました。Aさんの資産はもとの水準近くに戻ります。「持ち続ければ上がる。やはり俺は正しかった」——Aさんは再び、己の知性と優秀さを誇る全能感を取り戻します。

しかしこの「回復体験」こそが、Aさんにとって最も危険な出来事でした。あの恐怖の数週間から、Aさんが学んだ教訓は「リスク管理の必要性」ではなかったのです。「嵐が来ても、じっと持ち続ければいい」「株式投資とは根性だ」という、根拠のない精神論の強化でした。Aさんの思考は、もはや投資ではなく、自己肯定感を強化するための試練のように変質していたようです。

勢いを取り戻したAさんは、SNSへの投稿も再開しました。「8月の暴落を耐え抜いた。パニック売りする奴らは愚鈍」。また引用ポストで一斉に揶揄されているようでしたが、気にしません。

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