
不動産を相続することになったけれど、どこを探しても権利証が見当たらない…。真っ青な顔で司法書士のところへ相談に来る人は珍しくありません。権利証がなくても相続登記は可能です。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が具体的に解説します。
相続登記は、相続人が「権利証を持っていない」前提で手続きが可能
「父が亡くなり、不動産を相続することになったのですが、どこを探しても権利証がないんです…」
筆者のもとにも何度か寄せられたことがあるこの手の相談ですが、まずはこの「権利証」について説明したいと思います。
不動産の権利証とは、不動産の所有者が法務局に登記申請をした際に交付される書類で、不動産の所有者であることを示すものです。通常の不動産売買や贈与登記では、所有者しか持っていない権利証を提出することで、売り主本人であることを証明できます。
実は、この「権利証」という言葉は過去のものであり、現在は「登記識別情報通知」という形式に変わっています。登記識別情報通知は、英数字12桁の符号が記載された書類で、現在の「権利証」にあたります。とはいえ、実務上は、紙の権利証も登記識別情報通知もまとめて「権利証」と呼ぶことが一般的です。
通常の売買や贈与の登記では、売主と買主が共同で申請する必要があります。このとき、売主本人であることを証明するために権利証が使われます。
一方の相続登記は、亡くなった人が所有している不動産の名義を相続人へ移す手続きです。しかし、亡くなっている元の所有者は、登記申請には関与することができません。
そのため、相続登記では、登記の申請者(相続人)が権利証を持っていないことが前提で手続きができるようになっています。つまり、例外的に権利証の提出が不要となっている登記手続きなのです。
権利証がある場合のメリット・ない場合の対応策
とはいえ、相続登記において権利証を持っていることにまったく意味がないわけではありません。
権利証には不動産の所在地や地番、家屋番号、所有者の氏名などが記載されているため、相続財産の特定に役立ちます。登記事項説明書の取得の手がかりとなるため、権利証が手元にあれば手続きがスムーズに進む、というメリットがあるのです。
権利証が見当たらない場合は、まず、不動産の所在地を確認する必要がありますが、固定資産税の納税通知書や名寄帳を使えば、所有する不動産を調べることができます。
そこから登記事項証明書を取得したうえで、被相続人と登記簿上の所有者が一致しているかを確認します。
相続人が複数いる場合は、相続関係説明図を作成して相続関係を整理しておくと、手続きが進めやすくなります。
