◆投球回数だけでは足りない「サイ・ヤング賞の壁」
ただ、仮に大谷が最終的に規定投球回数に達して、防御率1.50前後の数字を残したとしても、サイ・ヤング賞の受賞はかなり厳しいのが現実だ。その最大の理由が、今季のナ・リーグは好投手がそろっているからである。15勝&防御率0点台なら大谷にも可能性がありそうだが、逆にいえば、それくらいインパクトのある成績を残さない限り、栄えある賞はライバルの手中に収まりそうだ。
その筆頭格が、ブルワーズのジェーコブ・ミジオロウスキーである。
2年目のミジオロウスキーは、現在のサイ・ヤング賞争いで最も存在感を放っている。ここまで14試合に投げ、8勝2敗、防御率1.34、被打率.140、131奪三振という圧倒的な数字を残しており、ブルワーズのエース候補だった右腕は、今や球界最高峰の投手へと駆け上がろうとしている。
特に圧巻だったのは前回のフィリーズ戦。強力打線を相手に序盤から三振の山を築き、与えた走者は4回にカイル・シュワーバーが放った単打1本のみ。しかもその回は併殺を打たせて3人で切り抜けたため、いわゆる準完全試合を達成した。
このままケガなくシーズンを完走すれば、間違いなくサイ・ヤング賞争いの大本命となるだろう。
◆大谷に必要なのは「エースとしてのボリューム」
そして投手・大谷にとってのライバルはミジオロウスキーだけではない。クリストファー・サンチェス(フィリーズ)は8勝3敗、防御率1.93をマーク。6月に入ってからやや勢いを失っているが、もし現時点で投票が行われれば、幾つかの1位票が入ってもおかしくない。他には、今季防御率が2.85と本来の実力からすればやや物足りない数字にとどまっているポール・スキーンズ(パイレーツ)も、今後巻き返してくることは必至。さらにチームメートの山本由伸も、ライバル勢に負けず劣らずの投球を披露している。まさに、今季のナ・リーグは好投手が目白押しという状況だ。
近年のサイ・ヤング賞投票は、防御率や勝利数、投球回数、奪三振、さらにはWARなど総合的な貢献度が評価される。そのため、防御率1点台前半という数字だけでは決定打になりにくい。
仮に大谷が今後も好投を続け、防御率1.50前後でシーズンを終えたとしても、規定投球回数ぎりぎりの到達では投票者の評価が割れる可能性がある。一方で160~170イニングを投げ、15勝前後を積み上げることができれば少し話は変わってくるだろう。
つまり大谷に必要なのは、防御率を守ることではなく、エースとしての「ボリューム」を証明することである。

