◆なぜ凶行に走ったのか?
後日、話を聞いた社長から僕らに事の真相が明かされた。備品を盗んでいたのはストレス解消が目的たっだというのだ。テレビをどうするつもりだったのかという問いには「近くの川に投げ捨てるつもりだった」と答えた。実は、近くの居酒屋で働いていたものの出勤ができなくなって、月に数回ラブホでいかがわしい配信をしてお金を稼いでいたようで、そのストレスが原因なのではないかと社長は推理していた。
金銭と引き換えに自分の性を売りにする行為は、元来まともな人間を奇行に走らせるほど心を擦り減らすものだったのかもしれない。流行り病もすっかりなくなった今、彼女が何をしているかはわからない。
辞めてからというもの、勤務先のラブホからは足が遠のいたが、僕がラブホの清掃員を脱却したように、彼女が自分の心を犠牲にしてお金を稼がなければならない状況を脱していることを願うばかりだ。
<TEXT/ 千馬岳史>
【千馬岳史】
小説家を夢見た結果、ライターになってしまった零細個人事業主。小説よりルポやエッセイが得意。年に数回誰かが壊滅的な不幸に見舞われる瞬間に遭遇し、自身も実家が全焼したり会社が倒産したりと災難多数。不幸を不幸のまま終わらせないために文章を書いています。X:@Nulls48807788

