歌舞伎町のホストクラブ・Lillionで働く翠嵐(すいらん)は、外国人観光客からそんな質問を受けることがある。
ホストクラブといえば、日本人女性が通う夜の社交場というイメージが強い。だが、外国人観光客であふれる現在の歌舞伎町では、その常識が少しずつ変わり始めている。
実際、翠嵐のもとにはアメリカ人や中国人、韓国人など、さまざまな国の客が訪れる。インバウンドの波は飲食店やホテルだけでなく、ホストクラブにも押し寄せているのだ。
「日本人客だけを相手にするより、世界に目を向けた方がマーケットは大きいと思うんです」
そう語る翠嵐は、英語で接客できる数少ないホストの一人である。なぜ外国人はホストクラブへやって来るのか。そして、“日本独自の夜の文化”は世界へ広がっていくのだろうか。

◆アニメでホストの存在を知ることも
外国人客と聞いて、多くの人は中国人や韓国人を思い浮かべるかもしれない。しかし翠嵐によると、自身の外国人客の層は、約7割はアメリカ人だそうだ。なぜなのか。理由は意外なものだった。
「『桜蘭高校ホスト部』ですね」
2000年代に人気を博した少女漫画・アニメ作品だ。
「アニメを見てホストという文化を知った人が多いです。日本文化やアニメが好きで、『一度本物のホストクラブに行ってみたい』と思っている人は結構いるんですよ」
外国人観光客にとって、ホストクラブは単なる飲み屋ではない。日本独自のカルチャー体験の一つだ。アニメやドラマ、YouTubeを通じて知った世界を実際に見てみたい。そんな動機で来店するケースが少なくない。
近年では、ドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』や、カリスマホストとして知られるローランドの動画などをきっかけにホスト文化へ興味を持つ外国人も増えている。
「アメリカやヨーロッパのお客さんは、日本文化の体験として来る人が多いですね。ホストクラブ自体を楽しみにしている感じです」
かつては日本人女性だけの閉じた空間だったホストクラブが、いまや外国人観光客の観光スポットになりつつある。
◆外国人客にとって“体験型エンターテインメント”
とはいえ、外国人客がホストクラブで日本人客と同じように遊ぶわけではない。むしろ遊び方は大きく異なるのだとか。「日本文化を体験したい人が多いんです」
恋愛感情や疑似恋愛を求めて来店するよりも、“体験型エンターテインメント”として訪れるケースが多い。
象徴的なエピソードがある。
「アメリカ人のお客様が一人で来店して、20万円ぐらい使ってくれたことがあります」
その客はシャンパンを注文し、シャンパンコールまで体験して帰って行った。もちろん、全員が大金を使うわけではない。むしろ日本人客より慎重なことが多い。
「ホストクラブって、ドリンク1杯が5000円とかするじゃないですか。アメリカ人から見ても普通に高いんですよ」
いくら円安とはいえ、観光客にとってホストクラブは決して安い遊びではない。だからこそ翠嵐は、接客前に予算を確認する。
「予算を超えないように遊んでもらうようにしています」
外国人を接客するうえで肝に銘じているのが、文化体験として楽しみたい人に無理な営業はしない姿勢だ。
国によって遊び方にも違いがある。アメリカやヨーロッパの客はホスト文化そのものを楽しむ傾向が強い。一方、中国や韓国などアジア圏の客は、より“推し活”に近い感覚を持つことが多いという。
「中国や韓国のアイドルみたいな見た目のホストが人気ですね」
同じ外国人でも、求めるものは決して一枚岩ではない。

