予想していたのと違う老後
Aさんは内心、「妻ともっと仲良くしたい」と考えていました。ですが、どうしたらいいかがわからないのです。かつて想像していた老後の生活は、趣味のゴルフや釣りに出かけたり、妻と旅行したり……。そんな充実した日々を、当然自分も送れると思っていました。
しかし、物価も上がっている昨今、気軽にお金は使いづらいうえ、あと数十年続くかわからない老後の生活を考えると贅沢もできません。Aさんは、心にぽっかりと大きな穴があいたような生活をどうすることもできませんでした。
妻から離婚の申し出
そんなAさんにある日突然、妻から離婚を申し伝えられます。
「あなたは毎日なにをしているの? 家事もしないでただ寝て食べているだけじゃないの。そんな人と一緒にいるとこっちまで年寄り臭くなるわ。あなたは私の話を聞こうともしない。夫婦なのに、まるで他人と暮らしているみたい。いっそのこと別れましょうか?」
妻はそれまで“離婚”など、おくびにも出さなかったのですが、Aさんの定年後の態度に対して、長い時間をかけて不満と失望が積み重なったようです。
突然の宣告にAさんは動転しました。「別れたくない」というのが本心です。しかし同時に、ここまで妻を追い詰めていたのなら「どうしても別れたいというなら、彼女の願いを叶えてあげるべきなのか」という思いも頭をよぎりました。
そのときAさんは、一度は離婚したものの、経済的に破綻して結局は再び元妻と同居を始めることになった会社の先輩のことを思い出しました。「離婚して本当に互いの生活は成り立つのか」という現実的な恐怖が、Aさんを襲ったのです。
