前編では、検察側の冒頭陳述をもとに、身の毛もよだつ残忍な犯行に至った経緯などを詳報した。後編となる本記事では、弁護側の冒頭陳述と、被害女性の実母の供述調書などから、事件の背景をひもとく。
◆障害年金生活のなかで始まった“歪な関係”の実態

検察側に続き、弁護側の冒頭陳述がはじまった。弁護側は「起訴内容は争わない」としながらも、金銭を搾取され続けた事情を述べて情状酌量を求めた。その要旨は次のとおりである。
<高野さんは統合失調症と診断され、通院しながら月7万の障害年金で生活をしていました>(弁護側冒頭陳述の要旨・以下同)
決して余裕があるとは言えない生活状況だった。しかし、好意を抱いた佐藤さんに、高野被告は大金をはたいた。
<LINEで、たわいもないやり取りをするなかで、佐藤さんは直接会うことを提案してきました。何度か(山形市にある勤務先の)お店に行き、その度に大きなお金を使いました>
佐藤さんは当時、出生地の山形県内のキャバクラに勤務していた。その初対面から1か月ほどで、佐藤さんから「お金を貸してほしい」と無心され、指定された金額を送金した。
<(貸した金銭を)すぐに返すという約束は守られませんでした。それ以降何度か「お金を貸してほしい」と頼まれました。色々な理由でしたが、高野さんはそれを信じました。しかし、すぐに高野さんの貯金は底をつきました>
◆借金までして送金…返済を求めても届かなかった訴え
高野被告の貯金では、まかないきれない金銭の要求に、断ったこともあったという。だが、佐藤さんは引き下がらなかったようである。<しかたなく、お金を消費者金融から借りて佐藤さんに貸しました。その後、高野さんは何度も返してくれるように頼みました。佐藤さんは「大丈夫」、「返す」と繰り返しました。そのうち、返信もなくなりました>
一度だけ、高野被告の返済要求に応じて、3万円を返してきたことがあった。しかし、以後返済されることはなく、それどころか、姿を消すように佐藤さんは配信を休止してしまった……。
これを受けて、高野被告は、告発するようにSNSに佐藤さんとの金銭トラブルについて投稿。すると、当時の交際相手とされる人物からこんな申し出があった。
<「SNSで投稿されると影響がある」と言われ、今後同様の投稿をしたら違約金として300万円払うように求められました。高野さんは警察に相談しましたが、「民事には対応しない」と門前払いされました。そこで、裁判を起こすことにしました>
勝訴判決を受けた高野被告は、佐藤さんの口座を差し押さえたが、残高はわずか「160円」。もはや判決は紙切れにすぎなかった——。

