
◆武道の黒帯である母親から制圧
2002年、日向さんは女性としてこの世に生まれた。言葉の認識が早く、読み書きも同い年の子どもに比べて早かったという。両親ともに筑波大学の同級生というインテリ家系。だが日向さんの才覚は群を抜いていた。「いわゆる“やりづらい子ども”だったと思います。大人が言うことに『なんで?』とよく言っていました。IQも140くらいあって、なかでも言語分野はかなり高い数値が出ていたと思います。しかし母はそんな私を快く思わなかったようです。幼少期、友だちのお母さんと話していたら、母に『大人はあなたと話したくて話しているわけじゃないのよ、気を使ってくれているだけなの』と叱られたのを覚えています。いつだったか、『本当は子どもなんてほしくなかった』『親だからといって、子どもを愛さないといけないわけじゃないのよ』と言されたこともありました」
日向さんの母親は、子どもである日向さんを“対等”に扱う。ただし“対等”のベースには、尊重ではなく冷徹さがある。
「母が私に手を出すときは、躾ではなく喧嘩だと本気で思っていたようです。彼女は元警察官であり、少林寺拳法などの武道の黒帯です。何か気に入らないことがあれば、決まって私を投げ、制圧したあとに殴ってきました。その際、『顔と内臓は傷つけたらダメ』と言っていました。一方的にやられる私としては恐怖しかありませんでしたが、元警察官として、児童虐待がどうやって捜査されるのか知っていたからこそ慎重にはなったのかもしれません」
◆髪を掴み、引きずり倒されるのは日常だった
他方で、こんな教育方針を臆面もなく口にしたという。「母はよく『子どもは動物と同じだから、殴って言うことを聞かせる』と言っていました」
母親は“動物”に容赦がなかった。
「激昂していないときは普通の母親なので髪を結いてくれたりもするのですが、その最中になにか怒らせたら、髪の毛ごと掴んで後ろに引きずり倒されることもありました。謝っても、『あなたの謝罪になんて何の意味もない』と言ってまったく手を緩めません」

