5.日本市場 ― 逆風下の健闘
需要の回復とアジア市場での位置づけ
2025年の日本のワイン消費量は330万hl(前年比6.8%増)で、過去5年平均並みの水準に回復した。世界全体で消費が落ち込むなか、日本は増加に転じた点が対照的である。アジアでは総消費量で中国が依然首位だが、近年は減少傾向が続いている。日本は前年比で増加し、アジアでは中国に次ぐ消費市場となった。

輸入統計が示す「量より質」への転換
貿易統計をみると、日本の輸入構造には変化が表れている。2025年の輸入数量は約2億3,441万リットル(約234万hl)で、前年比2.2%減とほぼ横ばい。ユーロ建ての輸入金額は15億ユーロ(同1.7%減)とやや縮小したが、これは円安・ユーロ高の影響が大きい。円ベースの通関統計では前年比1.47%増の約2,526億円
で、金額は前年を上回った。主要輸入国の多くが二桁近い減少を示すなか(米国は11.6%減)、日本の減少幅は小さい。
輸入単価も高い。2025年の日本の平均輸入価格は6.38ユーロ/L(1リットルあたり約1,000円超)
で、同年の世界平均輸出価格3.56ユーロ/Lの約1.8倍にあたる。数量よりも単価の高い品目へと構成が移っており、比較的高価格帯のワインの比重が大きいことがうかがえる。
カテゴリー別・供給国別の動向 ― スパークリングとフランスの存在感
日本市場を支える要因の一つが、スパークリングワイン(とくにシャンパーニュ)への需要である。カテゴリー別では、スパークリングの輸入額がワイン総輸入額の約42%(約1,056億円)を占め、ボトル入りスティルワインの総額に近い規模となった。金額ベースで前年を下回らなかった唯一のカテゴリーで、外食需要の回復などが背景にあるとみられる。

供給国別にみると、数量と金額で首位が分かれている。数量首位は価格競争力の高いチリで、年間約6,294万リットルを供給した。チリワインはコンビニやスーパーでの取り扱いが多く、日常消費の中心となっている。金額首位はフランスで、約1,495億円と他国を上回った。円安が進むなかでもフランスからの輸入額は前年比1.18%増と伸び、高価格帯ワインへの需要が維持されていることを示している。
今後の展望 ― 一人当たり3.0Lが示す伸び代
一方で、一人当たりの消費量には拡大の余地が大きい。成人一人当たりの年間ワイン消費量は約3.0リットル(ボトル約4本分)
にとどまり、年間40リットル前後、多い国では60リットルを超えるフランスやイタリアなど欧米の主要消費国と比べて低い水準にある。
この水準の低さは、需要拡大の余地があることも意味する。日常的にワインを飲む層は人口の一部にとどまっており、販売施策や食習慣の変化によっては、消費頻度の低い層の需要を押し上げる余地がある。高価格帯化の進行と未開拓の消費量の両面から、日本は生産国にとって引き続き重要な市場と位置づけられる。
2025年は、量の縮小を通じて需給の均衡が保たれた調整の一年だった。気候・需要・貿易の各面で不確実性が続くなか、高価格帯化と国際化は進んでいる。構造的な需要減が続く世界市場のなかで、増加に転じた日本市場の動向は、生産国にとっても注目される。

