◆■“怒れる常連”の正体は、じつはストーカーだった
伊藤さんの話でいちばん驚かされるのは、あの怒声の正体が「一目惚れした奥さんに振り向いてほしかった」という、切ないほど個人的な感情だったことです。カスハラのように見えて、その根っこはストーカー的な執着だった――この二つは、じつは地続きなのかもしれません。警察庁の統計によれば、令和6年に警察が受理したストーカー事案の相談は約1万9,000件。加害者を年齢別に見ると、60歳代が1,360人、70歳以上も1,028人と、シニア層だけで年間2,000人を超えます(出典:警察庁「令和6年におけるストーカー事案等への対応状況について」)。“恋愛は若者のもの”というイメージとは裏腹に、シニア世代の想いがこじれてしまうケースは、決して珍しくないのが実情です。
◆■“シニアだから”じゃない、たぶん
こう書くと「最近のシニアはマナーが悪い」という話に聞こえてしまいそうですが、そう単純でもなさそうです。冒頭で紹介したUAゼンセンの同じアンケート調査によれば、迷惑行為をしていた顧客の推定年齢は、50代以上が全体の約4分の3を占めます。ただ、日本社会そのものが高齢化しており、街を歩く人・買い物をする人の年齢層も年々上がっています。「シニアだからトラブルを起こしやすい」というより、「客の中に占めるシニアの割合が高いから、目立ってしまう」という側面は、無視できないのかもしれません。それでも気になるのが、今回の男性が発した「一体いくら使ったと思っているんだ」という一言です。長く通ってきた自負、日々の生活で積み重ねた“店との関係”――本人にとっては、それが花束を渡す動機になるくらい大切なものだった。そこを店側が受け取らないと言った瞬間、拠り所を崩された感覚に襲われたのかもしれません。

