◆■レジ越しの数分が“特別な時間”になるとき
内閣府が令和6年に実施した「人々のつながりに関する基礎調査」(対象2万人)でも、日常的に孤独感を抱える人の割合は依然として少なくないという結果が出ています(出典:内閣府 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査)。家族との会話が減り、職場という居場所もなくなった人にとって、行きつけの店での「いつもありがとうございます」の一言は、想像以上に大きな意味を持つことがあります。パンを毎日買いに来ていた男性も、本当は家族の分ではなく、一人分でよかったのかもしれません。それでも通い続けたのは、そこにしか居場所がなかったからなのかもしれない――そんな見方もできそうです。
もちろん、それは花束を押し付けたり、杖を振り回したりしていい理由にはなりません。ただ、“変な客”という一言で片付けてしまうと、同じことは何度でも、あちこちのお店で起きてしまいそうです。
◆■通報は「大げさ」ではない、それでも

そのうえで、店員側に“やわらかく突き放す”言葉の引き出しが少しあると、事態が大ごとになる前にほぐせる場面もあるのかもしれません。「お気持ちだけ、ありがたく」――受け取らない意思を伝えつつ、相手の存在そのものは否定しない。難しい線引きですが、シニア層の来店が増え続けるこれからの接客業では、こうしたやりとりの技術が、防犯ブザーと同じくらい大切になっていくのかもしれません。
誰かの“居場所”になれる店でありながら、従業員も守られる場所であること――。その両立を目指す試行錯誤は、たぶん、これからの時代ずっと続いていくのだろうと思います。
<再構成/日刊SPA!編集部>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

