◆絶縁されても両親を憎み切れないワケ
達希さんが抱える虐待の後遺症は深刻だ。長年続く抑うつ状態から「気分変調症」と診断されており、日常のふとした瞬間にフラッシュバックに襲われることも。現実感が失われる感解離症状に苦しむ日もある。しかし、加害者である両親に対する想いは複雑だ。達希さんは、どうしても両親を憎み切れない。
「両親に対する気持ちは、言葉にするのが難しい。憎むことも恨むことも許すことも簡単にはできません。本当に苦しかったけれど、育ててもらった事実もある。色んな感情が複雑に絡み合っています」
父親からは「2度と帰ってくるな」と絶縁を言い渡され、母からは「家族を捨てた裏切り者」と罵られた。それでもなお、両親を嫌いになり切れない達希さん。彼の気持ちを知ると、親という存在が子どもに与える影響の大きさを思い知らされる。
少しずつ自分の人生を取り戻している達希さんは今、自身の生い立ちや障害も丸ごと受け入れてくれる彼女と支え合いながら自立への道を歩んでいる。
「支え合える存在がいることは、大きな心の支えになっています。これまでの人生には苦しい出来事が数多くありましたが、大切な人と過ごしたり、趣味の詩を書いたりしていると、日常の中にも小さな光はたしかに存在しているんだなと思えます」
25年間も親の支配下に置かれた達希さん。彼の体験談を知ると、SOSをあげることが難しい被虐待児の守り方も考えたくもなる。
<取材・文/古川諭香>
【古川諭香】
フリーライター。生まれつき心臓病で脾臓がない。得意な執筆ジャンルは生きづらさ、障害、猫。おキャット様と快適に暮らせる家を建てたほど、私生活では猫の下僕。X:@yunc24291

