◆■東京ドーム1杯1000円、ほかの球場の価格は?

この動きは、東京ドームだけの話ではありません。プロ野球12球団の生ビール価格を調査した『FUNGO BASEBALL』の集計によれば、2026年シーズンの12球団平均は1杯950円前後にまで達しています(出典:FUNGO BASEBALL 2026最新 プロ野球12球場おすすめグルメ&ビール価格)。原材料費・物流費・人件費の高騰を背景に、約8割の球団が2025〜2026年にかけて50〜100円の値上げに踏み切り、阪神・甲子園球場も2023年の750円から毎年50円ずつ上がって2026年は850円。ビール1杯を取り巻く経済は、この数年で確実に変わっています。
それでも佐々木さんが語っていた「達成金のラインをめぐる終盤の焦り」は、単価が上がった今も、球場のどこかで繰り返されているのかもしれません。サーバーを担いだまま客席を見渡している売り子がいたら、その視線の先には「あと何杯」というラインが、たしかにあるのでしょう。
◆■MLBと比べたら、日本のビールは高い?安い?

もっとも、同じ「MLB球場のビール価格」でも、調査によって数字はかなり違います。米メディア『Cheapism』の調べでは、ドジャー・スタジアムの1杯は16ドル(約2,592円)。一方、Yahoo Sportsが引用したランキングでは同じドジャー・スタジアムが7.19ドル(約1,165円)。同じ球場でも銘柄・サイズ・売店によって価格帯が大きく異なるため、単純に「MLBは1杯いくら」と言い切るのは難しいのが実情です。ただ、どの調査を見ても、平均価格は日本円で1,000円台後半〜2,000円台に届く水準。少なくとも東京ドームの1000円が、MLB基準では特別に高い部類ではないことは、共通して言えそうです。
2025年3月には「日本の球場は900円」とSNSで紹介した動画に、MLBファンから「信じられん!」といった驚きのコメントが並んだこともありました。当時のドル円レートを152円台として計算すると、900円は約5.9ドル。物価の高いLA基準では、これはかなり衝撃的な安さだったようです。
もう一つ注意したいのが、ビールのサイズ。MLBのビールは球場によって12オンス(約355ml)から24オンス(約710ml)など幅があり、日本の球場で提供される一般的なサイズと単純に比べることはできません。それでも、1杯を手にしたときの体感価格として見れば、東京ドームの1000円はMLBのどの調査結果と比べても安めの水準。「日本のビールは高い」と嘆きつつ、世界と比べれば意外にも良心的な値付けなのかもしれません。
ちなみに、350mlあたりの酒税は日本が約54円、米国は連邦税に州税を加えても、多くの州で10〜30円程度。税金だけ見れば日本のビールは米国の2〜5倍重い計算になります。それでも球場のジョッキ1杯では日本のほうが安く見える――このねじれもまた、球場ビールの面白さかもしれません。
◆■球場のビールは、ただのビールではない

新しい生ビールサーバーを背負う若者が話題になったり、キャッシュレス決済でスマートに買えるようになったり、球場のビール事情はここ数年でずいぶん様変わりしました。それでも「誰から買うか」で一杯の味が少し変わる気がするのは、昔から変わらないところなのだろうと思います。
次に球場でビールを頼むときは、値段にため息をつく前に、運んできてくれた売り子の“目線の動き”に、少しだけ注目してみるのも面白いかもしれません。



【セールス森田】
Web編集者兼ライター。フリーライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント

