知らぬ間に数十万円の出費も…睡眠中の歯ぎしりが招く“歯の破産”

知らぬ間に数十万円の出費も…睡眠中の歯ぎしりが招く“歯の破産”

「最近、詰め物がよく取れる」「朝起きるとアゴがだるい」「歯がしみるようになった」

そんな症状に心当たりはないでしょうか。年齢のせい。疲れのせい。あるいは歯の老化だと思っている人も多いかもしれません。しかし実は、その原因が“寝ている間”に起きている可能性があるのです。

野尻真里
歯科医師の野尻真里
仕事のストレス、人間関係のプレッシャーや将来への不安。日中は平然と過ごしていても、体は正直です。眠っている間に無意識で歯を強く噛みしめたり、ギリギリと歯を擦り合わせたりする「歯ぎしり」は、知らないうちに歯そのものを破壊していくことがあります。しかも厄介なのは、寝ている間なので本人に自覚がないケースが多いことです。

実際、歯科医院では「むし歯ではないのに歯が欠けた」「高額なセラミックが割れた」「何度も詰め物が取れる」といった患者さんの背景に、歯ぎしりや食いしばりが隠れているケースは少なくありません。働き盛りの世代ほど要注意。

気づかないうちに歯をすり減らし、将来の健康だけでなく、いつか必要になる治療費という“見えない負債”を積み上げているかもしれないのです。今回は、夜間の歯ぎしり、食いしばりについて解説します。

◆睡眠中の歯ぎしりは想像以上に力が強い


歯軋り
※写真はイメージです(Adobe Stock)
睡眠中の歯ぎしりは想像以上に力が強いものです。歯ぎしりというと、「ギリギリ音がする迷惑な癖」というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし歯科医が問題視しているのは、音ではなく“力”です。実は睡眠中の歯ぎしりや食いしばりでは、普段の食事よりも強い力が歯に加わることがあり、その負担が長時間繰り返されることが問題なのです。

普段は、食事の際など必要に合わせて、噛む力をコントロールしています。しかし睡眠中は無意識の状態です。そのため、自分でも気づかないうちに強く噛み締めてしまうことがあるのです。歯ぎしりの力は個人差がありますが、自分の体重に近い力、あるいはそれ以上の力が歯や顎に加わります。つまり、体重60kgの人なら、夜な夜な60kgのダンベルで歯をゴリゴリと踏み続けているようなもの。あるいは「毎晩、大人の男性に顎を全力で踏まれている」と言い換えてもいいかもしれません。

そんな過酷なプロレス級の衝撃が、数秒ではなく一晩に何度も繰り返されているのです。どんなに丈夫な歯でも、長年にわたって負荷がかかり続ければ少しずつダメージは蓄積します。

歯がすり減る。歯の根元部分が欠けてくる。詰め物が外れる。被せ物が割れる。時には健康な歯そのものが欠けたり、ヒビが入ったりすることもあります。

むし歯や歯周病ではないのに、歯に大きなダメージを与えてしまうのが歯ぎしりなのです。

◆歯ぎしりが招く5つの悲劇

金属の詰め物
金属の詰め物(インレー)の下の歯質が夜間の歯ぎしりで割れてきた
「たかが歯ぎしり」と軽く考えている人もいるかもしれません。しかし、睡眠中に繰り返される強い力は、少しずつ歯や顎にダメージを蓄積させていきます。実際に歯科医院でも、歯ぎしりや食いしばりが原因と考えられるトラブルは少なくありません。

①歯が削れる

歯の表面はエナメル質という非常に硬い組織で覆われています。しかし、長期間にわたって歯ぎしりが続くと、歯の表面のエナメル質が少しずつすり減ったり、歯の根元部分に過剰な力が集中して欠け(くさび状欠損)が起こることがあります。

エナメル質が薄くなると、冷たいものがしみる知覚過敏の原因になります。また、一度削れてしまった歯は自然に元に戻ることはありません。歯のすり減りは見た目では気づきにくいものですが、将来的な歯の寿命にも影響を与える可能性があります。

②詰め物や被せ物が壊れる

「なぜか詰め物が何度も取れる」そんな経験がある人は、歯ぎしりが関係しているかもしれません。歯ぎしりによる強い力は、天然の歯だけでなく、詰め物や被せ物にも負担をかけます。強い力が繰り返しかかることで、数万~数十万円かけて治療したセラミックが欠けたり割れたりすることがあります。

せっかく時間と費用をかけて治療しても、原因となる歯ぎしりが改善されなければ同じトラブルを繰り返してしまうこともあるのです。

③歯が割れる

歯ぎしりによるダメージの中でも特に深刻なのが歯の破折です。歯には目に見えない小さなヒビが入ることがあります。そのヒビに長期間力が加わり続けることで、ある日突然、歯が大きく割れてしまうことがあるのです。割れ方によっては被せ物や詰め物では修復できず、抜歯が必要になるケースもあります。むし歯でもない健康な歯を失う原因の一つとして、歯ぎしりは決して軽視できません。

④顎関節症を引き起こす

朝起きたときに顎がだるい。口を開けるとカクカク音がする。大きく口を開けると痛い。
こうした症状は顎関節症のサインかもしれません。歯ぎしりや食いしばりによって顎の筋肉や関節に過剰な負担がかかると、顎関節症を引き起こすことがあります。症状が進行すると、食事や会話がつらくなったり、慢性的な頭痛や肩こりにつながったりすることもあります。

⑤顔が老けて見える

意外に思われるかもしれませんが、歯ぎしりは見た目にも影響を与えることがあります。歯ぎしりや食いしばりを繰り返すと、噛む筋肉である咬筋が過度に発達します。寝ている間にいわば「顎の筋トレ」を限界まで行っている状態。その結果、エラがどんどん張りだし、フェイスラインがどんどん四角く、まるでホームベースのようになっていくのです。

「最近、顔が四角く老けてきたな……」と感じ、高いマッサージを検討しているあなた、原因は加齢ではなく、夜間の猛烈な筋トレ(歯ぎしり)かもしれません。


配信元: 日刊SPA!

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