
熱中症を防いで厳しい暑さを乗り切るために、今始めておきたいのが「暑熱順化」。
暑さに体をならし、汗をかく力を高めていく〝夏前のウォーミングアップ〟です。
日本気象協会の泉澤里帆さんと、熱中症に詳しい医師の藤永剛先生に話を聞きました。
教えてくれたのは……
日本気象協会
泉澤 里帆さん
大学卒業後、日本気象協会に入社し、「熱中症ゼロへ」プロジェクトのリーダーに。気象データを活用した情報発信やメディア出演などを通し、熱中症予防の普及と啓発に取り組む。
埼玉慈恵病院副院長
藤永 剛先生
医師、医学博士。国内有数の猛暑地域として知られる埼玉県熊谷市の埼玉慈恵病院に1996年より勤務し、地域医療と熱中症診療に尽力。テレビ、雑誌などメディアでも幅広く活躍。
汗をしっかりかけて炎症に負けない体へ
毎年のように猛暑が続く中で注目されているのが「暑熱順化」です。
簡単にいえば、体が暑さになれた状態のことです。
「近年は4月・5月でも気温が上がり、地域によっては最高気温が25℃以上の夏日になることもあります。いわば〝暑さの前倒し〟ですね。本格的な夏の暑さを迎える前に、早い時期からの暑熱順化が必要です」と泉澤さんは話します。
そもそも熱中症とは、高温多湿の環境に体が適応できないために起こる症状の総称です。主な症状として、顔のほてり、めまい、だるさ、吐き気などがあります。
「暑い街」で知られる埼玉県熊谷市で長らく熱中症の救急診療を担ってきた藤永先生は「熱中症の真の恐ろしさは、『炎症ドミノ』にある」と警鐘を鳴らします。
「熱中症では細胞がダメージを受けるだけでなく、体内で炎症が生じ、ドミノが倒れるように全身に広がることがわかってきました。
『炎症ドミノ』が起こると、すぐに止めるのは難しい。軽症の熱中症に気づかずに放置していると、数時間から数日で悪化、血流が低下して臓器障害などにつながることもあります」
しかし、あらかじめ暑熱順化などの対策をしておけば、熱中症やその悪化、重症化を防ぐことができます。
暑熱順化が進むと、まず汗の量が増え、汗の質も変わります。塩分の多いネバついた汗から、次第に塩分の少ないサラサラした汗に変わっていくのです。
また、循環する血液の量も増えるため、熱を放散しやすくなり、効率よく体温調節ができるようになります。
暑熱順化の過程では、細胞の保護・修復を担う「HSP(ヒートショックプロテイン)」というたんぱく質も増えます。
さらに、体内の炎症を抑える働きをもつ「マイオカイン」も分泌されやすくなるそう。
「汗をかきやすくなるだけでなく、炎症に負けない体をつくることができるのです」と藤永先生。
このような体づくりは、大人女性にとって、健やかな若々しさの土台にもなってくれるでしょう。
熱中症の救急搬送者数は、特に近年、右肩上がりで上昇。5・6月の搬送者数も増えており、早い段階からの暑さ対策が必要です。

暑熱順化の効果
汗をかきやすくして、体温調節しやすくなるとともに、
細胞の傷害を抑え、炎症を起こしにくい体をつくるという効果があります。
1. 塩分の少ない汗をかけるようになる
2. 血流がアップする
3. 体内での炎症が起こりにくくなる

