
資産防衛というと、多くの人は株式や不動産、金を思い浮かべるでしょう。しかし、世界では「何に投資するか」と同じくらい、「どの国で資産を持ち、家族と暮らすか」が重要なテーマになっています。こうした「国家そのもの」の質が、長期的な資産価値を左右する時代です。その視点から注目したいのが、南米の小国・ウルグアイです。一般的に不安定なイメージを持たれがちな南米にあって、周辺国から移住する人や、制度の安定を評価する経営者や投資家が絶えません。本稿では、クロスボーダーM&Aや海外資産管理に携わり、現在は香港を拠点に海外資産管理・海外移住コンサルティングを行う本名正博氏が、実務経験と現地取材をもとに、「国家への信頼」が資産価値に与える影響と、世界標準の資産防衛の考え方について解説します。
「何に投資するか」だけでは資産は守れない
どれほど優れた金融商品を保有していても、その国の政治や法制度が不安定になれば、資産価値は大きく揺らぎます。インフレや通貨安、金融規制の変更、政権交代による制度変更など、投資家自身ではコントロールできない「国家リスク」が存在するからです。
そのため世界の経営者や投資家は、株式や債券を分散するだけでなく、国家リスクそのものも分散しています。海外に銀行口座や不動産を保有したり、複数の国に生活や事業の拠点を持ったりするのも、その考え方の延長線上にあります。
では、世界の投資家はどのような国を資産の置き場所として評価しているのでしょうか。
その答えを考えるうえで示唆に富むのが、南米の小国・ウルグアイです。ウルグアイへの出張が決まった時、「南米=犯罪が多い」という先入観があり、治安に対してかなり身構えていました。しかし、首都モンテビデオを歩いた初日から、その先入観は大きく崩れました。
街には落ち着いた空気が流れ、海岸沿いでは人々が散歩や食事を楽しんでいました。警察官の姿をそれほど多く見かけるわけではないのに、不思議と安心して歩くことができたのです。人と資産を引き寄せ続ける理由があります。この国には、「国家そのものが資産になる」という考え方を理解するヒントがありました
「安全だから移住した」という一言
首都・モンテビデオの海岸沿いにある小さなレストランで、オーナーの女性がこう話してくれました。
彼女はウルグアイ人ではなく、ブラジルから移住してきた女性でした。
「この国は安全で、教育もしっかりしている。だから移住してきたの。物価は高いけれど、それだけの価値があるわ」
ブラジルは南米最大の経済大国ですが、都市部では治安への不安を抱える人も少なくありません。そのため、安全で落ち着いた生活環境を求めてウルグアイへ移住する人は珍しくないといいます。
印象的だったのは、彼女が収入や税金ではなく、「安全」と「教育」を真っ先に挙げたことでした。
資産を守るというと、お金を増やすことばかり考えがちです。しかし、家族が安心して暮らせる環境を選ぶことも、長期的な資産防衛の重要な要素です。世界では、こうした「生活の質」も資産価値の一部として捉えられています。
