いくらお金を積み上げても「老後不安」がなくならないワケ…多くの人が見落としている「人生の視点」とは【小林篤典CFPに聞く】

いくらお金を積み上げても「老後不安」がなくならないワケ…多くの人が見落としている「人生の視点」とは【小林篤典CFPに聞く】

「老後2,000万円問題」以降、多くの人が老後の生活資金に強い不安を抱えています。しかし、いくら投資でお金を増やしても、問題は解決しないのです。本当に心穏やかな老後を迎えるために必要なものとは? 6月に『父が溶かした退職金(上)(下)』を刊行した小林篤典氏にインタビューし、老後の不安を軽減するために必要な「見通しの立て方」と、必ず知っておきたい「制度」について伺いました。


「何が起こり、いくら必要になるかわからない」という不安

――なぜ、多くの日本人はこれほどまでに「老後のお金」に対して強い不安を感じるのでしょうか。

小林先生(以下、小林):

老後不安の正体は、一言で言えば「わからないこと」そのものです。自分がもらえる年金額で本当に足りるのかがわからない。今ある貯蓄を取り崩していって何歳まで持つのかがわからない。病気や介護が必要になったらいくらかかるかわからない。そして最もわからないのは「自分は何歳まで生きるのか」という寿命の問題です。

あらゆる未来が不透明だからこそ、人間は漠然とした不安に襲われ続けます。そしてその結果、多くのシニアが「とにかくお金を使わないようにしよう」と、極端な節約生活に入ってしまうのです。

統計データを見ると、皮肉なことに「人生の晩年が最もお金持ち」という実態があります。「不安だから」といって、現役時代から老後にかけてお金を切り詰め、使わないまま亡くなっていく。

出所:内閣府「令和6年(2024年)度経済財政白書」 [図表]年齢階級別の世帯当たり金融資産額(2019年) 出所:内閣府「令和6年(2024年)度経済財政白書」

死んだ後に大金が残っていても、本人の人生が豊かだったとは言えませんよね。元気なうちに行きたい場所へ行き、使いたいことにお金を使う。そのためには、不安の霧を晴らす必要があります。

日本の「公的保障」は驚くほど手厚い

――老後不安の霧を晴らし、「使っていいお金」を明確にするにはどうすれば良いですか。

小林:

まずは、国が用意してくれている「公的保障」の制度を正しく知ることです。実は、日本の社会保障制度は世界的に見ても驚くほど手厚いのです。病気で医療費が高額になれば「高額療養費制度」で自己負担は一定額に抑えられますし、万が一障害を負った場合は「障害年金」、配偶者を亡くした場合は「遺族年金」が支給されます。

しかし、これらの本当に価値のある制度は、テレビCMで宣伝されることはありません。そのため、多くの人が制度を知らないまま「何かあったら怖いから」といって、民間の生命保険や医療保険に大量に加入し、毎月高額な保険料を支払い続けています。

これは一種の「不安ビジネス」の罠にかかっている状態です。まずは公的保障という強固な土台を知る。その上で、どうしても足りない部分だけを民間の保険で最小限補う、というステップを踏めば、固定費を大幅に削減でき、投資や生活費に回せるお金を増やせるはずです。

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