
食料品への消費税率を2年間ゼロ%とした後、給付付き税額控除を導入する予定です。納税者には税額控除を行い、税額控除しきれない人や納税義務のない人には現金を給付することで、税制と社会保障を一体的に運用する仕組みです。すでに欧米ではさまざまな形で導入されており、低所得者支援や勤労支援、消費税の逆進性対策など、それぞれの国の事情に応じて制度設計が行われています。日本でも導入論が現実味を帯びるなか、どの国の制度を参考にするのか、日本独自の制度を構築するのかが大きな論点となっています。
給付付き税額控除が再び政策の中心に
給付付き税額控除とは、所得税などの納税義務がない人には現金を給付し、納税義務がある人には税額控除によって減税を行う制度です。税制と社会保障を組み合わせて所得再分配を図る仕組みであり、「給付」と「減税」を一体的に実施できる点が最大の特徴です。
この制度が再び脚光を浴びるきっかけとなったのは、2026年2月の衆議院選挙後、高市首相が打ち出した政策でした。首相は、食料品に対する消費税率を2年間ゼロ%とする措置を「つなぎ」と位置付け、その後の恒久的な制度として給付付き税額控除を導入する考えを示しました。これにより、これまで専門家の間で議論されることが多かった制度が、一気に現実の政策課題として注目されるようになったのです。
20年以上にわたり続いてきた制度導入の議論
もっとも、日本で給付付き税額控除が議論されるようになったのは、今回が初めてではありません。その発端は、1997年4月の消費税率5%への引上げにまでさかのぼります。当時、橋本内閣は社会保障財源の確保を目的として消費税率を3%から5%へ引き上げました。しかし、その後は景気後退やデフレが続き、さらなる消費税率引上げは政治的にも極めて難しい状況となりました。
その間、自民党から民主党への政権交代、さらに自民党への政権復帰という政治情勢の変化もあり、消費税率引上げの議論は長く停滞します。
一方で、高齢化の進展に伴い、社会保障費は増え続けました。消費税率を引き上げることが難しいなか、社会保障を維持する新たな仕組みとして注目されたのが、給付付き税額控除でした。
こうした流れのなかで、2007年11月に福田康夫内閣の税制調査会が公表した「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」では、「いわゆる給付付き税額控除(税制を活用した給付措置)」について独立した項目が設けられ、本格的な制度検討が始まります。
さらに、2009年度の自民党税制改正大綱でも給付付き税額控除が取り上げられ、2012年5月には税制調査会が諸外国の制度を比較した資料を公表しました。この資料では、米国、英国、ドイツ、フランス、オランダ、スウェーデン、カナダなど、すでに制度を導入していた国々の仕組みが紹介されています。
同年8月には、与野党3党協議を経て社会保障制度改革推進法が成立し、社会保障と税の一体改革が本格的に進められることとなりました。給付付き税額控除は、その制度設計を考えるうえで重要な選択肢の一つとして位置付けられてきたのです。
