日本の社会保障制度全体のあり方を左右
給付付き税額控除は、税制と社会保障を組み合わせることで、低所得者支援と所得再分配を実現しようとする新しい政策手法です。
カナダは消費税の逆進性を緩和することを目的とし、米国は勤労意欲を維持するための就労支援を重視しています。英国では複数の給付制度を一本化し、社会保障制度全体の効率化を図っています。同じ「給付付き税額控除」と呼ばれる制度でも、その目的や運用方法は国によって大きく異なります。
日本でも制度導入の議論が本格化していますが、海外制度をそのまま導入することは現実的ではありません。日本の税制や社会保障制度、地方税制度、行政組織などの実情を踏まえた制度設計が不可欠です。
英国のユニバーサルクレジットも、制度開始から10年以上をかけて対象範囲を広げ、運用改善を重ねてきました。日本でも、まずは限定的な制度として導入し、運用状況を検証しながら段階的に拡充していくのか、それとも当初から包括的な制度を構築するのかが、今後の政策判断の重要なポイントになるでしょう。
給付付き税額控除は、税制改正の一項目ではなく、日本の社会保障制度全体のあり方を左右する大きな改革です。今後は、財源論だけでなく、公平性、行政コスト、デジタル基盤の整備なども含め、多角的な視点から議論を深めていくことが求められます。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
