
◆『あまちゃん』以来13年ぶりの連ドラ復帰
のんはNHK『地震のあとで』(2025年)に声のみ出演し、TBS『キャスター』(同)には若手研究者役でゲスト出演するなど、単発の地上波ドラマには時折出演してきた。もっとも、連続ドラマへのレギュラー出演は、出世作となったNHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年度前期)以来13年ぶりとなる。この物語の中心となる3人はきらきらしているわけではなく、すぐ隣にいそうな存在。3人とも東京に行けば夢がかなうと信じていたが、現実は甘くなかった。
主人公の佐倉麻紀(仲)は颯爽と働くキャリアウーマンを目指していたが、思いがけず妊娠したため、美容外科医と結婚。現在は専業主婦で5歳の1人息子を育てているが、キャリアへの未練が捨てきれない。
山地遥(のん)は根拠もなくミュージシャンとして成功すると思い込んでいたが、今はアパレルショップの店長。お金は貯まらず、恋人もいない現状には大いに不満だが、地元には絶対に帰りたくない。
もう1人の永野薫子(深川)は公立小学校の教師をしている。大学を卒業したら結婚し、子供を2人生み、世田谷のマンションに住むと決めていた。堅実なようで、地に足の付かない人生設計を立てていた。実際には現在も独身。恋人と4年同棲しているものの、プロポーズはない。
特別に華やかなわけでも、うらやましい存在でもない3人だが、どこか愛おしく、関心を引かれる。彼女たちが地方からの上京組の最大公約数のような存在だからだ。
さらにそこには多くの35歳が抱える共通の焦燥や迷いが透けて見えるためである。それは若さという特権の喪失と、押し寄せる現実に対する戸惑いだ。
◆“普通の女性”を輝かせる、のんの特別な力
のんはどこにでもいそうな女性を、特別感のある存在として演じられる。山地遥は格好の役柄だろう。好例は『あまちゃん』における天野アキである。地味でパッとしない少女が、内面は変わらないまま、みんなを照らすアイドルになっていった。のんは役柄の幅が広い。阿部寛(62)と共演した映画『カラスの親指』(2012年)では、恵まれぬ環境に生まれたことを呪わず、詐欺師たちの仲間になるたくましい少女に扮した。同『さかなのこ』 (2022年)の役柄はさかなクンがモデル。並外れて魚が好きで、その思いだけで生きていく女性だった。社会のレールからはみ出しそうになっても、純粋な思いだけで生き抜いた。
のんには苦手な役柄が見当たらず、コミカルな役もシリアスな役も説得力を失わずに演じ分ける。自分自身が持つ強さや弱さ、陽性の部分や生真面目な面を、作品ごとに大きく増幅して役柄に投影させるからだろう。
ドラマ・映画界には貴重な存在だ。しかし、13年にわたって地上波連ドラへの出演がなかった。2015年から24年までの10年間は地上波単発ドラマへの出演もない。
その発端が以前所属していた大手芸能事務所「レプロエンタテインメント」との独立をめぐる確執だったことは広く知られている。どうして確執が生じ、その影響が長期化したのか。もう1度振り返ってみたい。

