病院だけでは支えきれない!…急増する高齢者の「心不全」の問題、在宅医療が担う役割とは【医師が解説】

病院だけでは支えきれない!…急増する高齢者の「心不全」の問題、在宅医療が担う役割とは【医師が解説】

呼吸器疾患との密接な関係

心不全という病名の「不全」とは、「その人の全身が必要としているだけの心臓の働きを果たせなくなった状態」を意味します。

もちろん、心臓そのものの機能低下は大きな原因ですが、それだけではありません。全身の病気や栄養状態の悪化などによって心臓への負担が増え、必要とされる働きに応えられなくなった結果として心不全に陥ることも少なくないのです。

高齢者では、誤嚥性肺炎やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患を合併することがよくあります。こうした病気では、酸素を全身に送り届けるために心臓はより多くの仕事をしなければなりません。しかし、心機能が低下している患者さんでは、その負担に耐えられず、心不全を引き起こしてしまいます。

また、心不全の患者さんでは、食後に息苦しさや疲労感を覚え、食事量が減ってしまうことも少なくありません。その結果、栄養状態が悪化し、筋力や心機能がさらに低下するという悪循環に陥ります。

このように心不全を診るということは、心臓だけを診るだけでなく、呼吸状態、栄養状態、身体機能、生活環境など、患者さんの全身を総合的に評価し、支えていくことが求められます。ここでも在宅医療は、その力を最も発揮できる医療の1つなのです。

病院医療との関係

高齢者の心不全に対する在宅医療では、心不全そのものの治療だけでなく、多くの併存疾患を抱えた患者さんの全身状態を診ることが求められます。

しかし、心不全が進行し、在宅での対応だけでは限界を迎える場面もあります。そのようなときには、病院で専門的な治療を受けることにより、さまざまな薬物療法や厳密な全身管理が可能となり、多くの患者さんが心不全の状態から回復します。この点において病院医療の果たす役割は極めて大きく、在宅医療に携わる私たちも日頃から深く感謝しています。

一方で、入院には別の側面もあります。高齢者では、安静による身体機能(ADL)の低下、褥瘡の発生、低栄養による体重減少などの影響により、心不全は改善しても全身状態が低下したまま退院されることも少なくありません。

だからこそ在宅医に求められるのは、「このまま在宅で治療を続けるべきか」「病院での入院治療が必要か」を適切に見極める判断力です。そして退院後は再び在宅で生活を支え、再増悪を防いでいく。この病院医療と在宅医療の橋渡しこそ、これからの心不全診療において極めて重要な役割だと私は考えています。

もちろん、そのためには病院と在宅医療との密接な連携が欠かせません。しかし現実には双方とも多忙を極め、十分な情報共有や意思疎通が難しい場面も少なくありません。切れ目のない医療を実現することが、私たちに課せられた大きな課題なのです。

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