
「毎日スポーツドリンクを飲んでいます」
歯科医院でそう話す患者さんの歯を診ると、歯の表面が溶け始めていることがあるのです。
熱中症対策として飲んでいるスポーツドリンクや経口補水液、塩分補給の飴。これらをダラダラと口にし続けることで、知らないうちに歯の表面は少しずつ溶けているかもしれません。
◆「むし歯じゃないのに歯が溶ける」“酸蝕歯”の恐怖

むし歯は、口の中の細菌が糖を分解して酸を作り、その酸によって歯が溶ける病気です。一方で酸蝕歯は、飲み物や食べ物そのものに含まれる酸によって、歯の表面が直接溶かされてしまう状態を指します。特にスポーツドリンクや経口補水液、炭酸飲料、レモン飲料などは酸性が強いものも多く、頻繁に口にすることで歯の表面を少しずつ溶かしてしまいます。しかも厄介なのは、酸蝕歯は痛みが出にくく、気づかないうちに進行しやすいことです。
「最近、冷たいものがしみる」「前歯の先が薄く透けて見える」「歯の表面が丸くなってきた」――こうした変化があれば、それはむし歯ではなく酸蝕歯のサインかもしれません。さらにスポーツドリンクには糖分も含まれているため、酸蝕歯だけでなく、むし歯のリスクも同時に高めてしまうのです。
◆仕事中の“ちびちび飲み”が一番やばい!量より「時間」が命取りに

歯は酸に触れるたびに表面が一時的にやわらかくなります。しかし通常は唾液の働きによって中和され、少しずつ元の状態に戻ろうとします。ところが、その回復する前にまた酸が入ってくると、歯は修復する時間を失い、ダメージが蓄積してしまうのです。特に夏はこの状態が起こりやすくなります。暑さで喉が渇き、スポーツドリンクを頻繁に口にする。デスクワーク中にペットボトルを机に置き、何時間もかけて少しずつ飲み続ける。冷房の効いた室内では口が乾きやすく、唾液の分泌も減りがちです。さらに塩分補給の飴やタブレットをだらだら口にしていると、お口の中が酸や糖にさらされる時間が長くなります。酸に触れれば酸蝕歯に、糖に触れればむし歯のリスクとなります。
つまり、歯にとって重要なのは「どれだけ飲んだか」より、「どれだけ長く酸に触れていたか」なのです。量より回数。この習慣の違いが、夏の終わりに歯へ大きな差を生むことがあります。

