資格がなくても医療現場を変えられる。30代で医療事務になり、職場改善まで果たした女性の話

資格がなくても医療現場を変えられる。30代で医療事務になり、職場改善まで果たした女性の話

「あまり平等な環境ではなかった」転職先での奮闘

──総合病院はどうして退職することになったんですか?

正職員になりたかったので、派遣契約が満了したタイミングで辞めることにしました。総合病院で正職員になる道も考えましたが、そのためには一度パートにならなければいけなかったのと、医療事務の資格も必要だったんです。その時間はかけられないと思って、転職することにしました。

転職先は、地元の眼科クリニックです。自宅から近く、お給料も比較的良かったので、ここだけ応募して、採用していただけることになりました。

──総合病院からクリニックへの転職だと、業務範囲も一気に広がりそうですね。

広がりましたね。これまでは基本的に会計業務だけでしたが、クリニックでは受付から会計、算定、レセプト、それから検査の補助まで任されるようになりました。

──「検査の補助」とはどんなことをするんですか?

患者さんを検査機器のある場所まで案内し、検査内容の説明や補助をおこなっていました。具体的には、眼圧測定、オートレフラクトメーター(視力測定前の気球の絵を見る検査)、視野検査、OCT撮影などを、先生の指示のもと補助していました。

▼医療事務の詳しい業務内容についてはこちらで解説!

──新しい仕事内容や人間関係はどうでしたか?

それが、もともと医療事務は私と別に3人いたんですが、私が入職した2ヶ月後に一人辞めて、さらに1年後にもう一人が辞めてしまったんです。

医療事務Hさん 取材中の様子

──何か原因が……?

あまり平等な職場環境ではなかったからですね。リーダーの男性がいたんですが、その人が絶対的な存在になっていて。リーダーの裁量でシフトが組まれ、人によって業務量に差が出るような状態でした。

ある日、この状況をどうにかしたいと思ってマネージャーに相談したら、「じゃあHさんをサブリーダーにするから」と言われてサブリーダーになりました。

そこからはもうバチバチの日々で。私がシフトを作っても拒否されるし、リーダーとサブリーダーではまだ役職差があり、まともに取り合ってもらえませんでした。なので2年目には私もリーダーになって、ようやく対等な立場で渡り合えるようになったんです。

仕事は担当制に変えて、業務量の偏りが出ないようにしました。それから、属人的だった仕事を整理したりマニュアル化したりして、誰かが抜けても回るようにしました。

──入職1年目から役職に就いたんですね! 大変な時期に辞めようとは考えませんでしたか?

辞めたかったんですけど、2人辞めたあとに残っていた事務の子がものすごく頑張って仕事を回してくれていたので、その子を残して辞めるわけにはいかないと思って。私の入職後に新しく入ってきたスタッフもいて、辞めるタイミングを逃しちゃいましたね。

むしろリーダーになってからは、「こんなクリニック変えてやる!」という気持ちが強くなりました。事務のスタッフや看護師さんたちが味方でいてくれたので、なんとか頑張れた感じですね。

──管理職は初めてかと思いますが、マネジメントするうえで何か参考にされたり、勉強されたりしましたか?

とくにはないんですけど、自分が先輩や同僚にしてもらって良かったことを、今度は自分がしようと考えて動いていましたね。

このクリニックでの4年間は大変なこともありましたが、リーダーを経験させてもらったことで、マネジメントについて考えたり、院長から経営の話も聞くようになったりして、すごく視野が広がりました。

──ちなみに、管理職になって給与はどのくらい変わりましたか?

リーダーになってからは、手取りで33〜34万円ほどでした。役職手当がついて、残業ありの金額です。派遣時代は21万円くらいだったので、だいぶ上がりましたね。

小児科クリニックで託された、新しい挑戦

──眼科クリニックは4年で退職されたんですか?

そうです。体制を整えることができたので、もう私はいなくても大丈夫だろうと思い転職を決めました。また違う診療科で学びたいと思ったので、今度は小児科のクリニックを選びました。

条件としては、自宅から通いやすいこと。それから、転職すると管理職ではなくなるのでお給料は下がってしまいますが、最小限の減額に留められるところを探しました。

──現在の新しい職場はどうですか?

眼科はご高齢の患者さんが多かったので新鮮です。診察が嫌で泣いたり暴れたりする子どもたちに「病院は怖いところじゃないよ」と伝えたくて、注射した跡に貼るシールに絵を描いたり、おもちゃのボールペンで気を紛らわしたりしています。こういう時間を持てるようになったことがうれしいです。

また、いまは受付だけでなく、診察の補助として診察室に入ることもあります。予防接種などでお子さんの体を支えたり、診察で使用する器具などの準備をしたりしています。

親御さんから先生や看護師さんには話しづらいことを伝えられることもあり、間を取り持つことにもやりがいを感じています。

Hさんお手製のシール
Hさんお手製のシール

──同僚との人間関係はどうでしょう?

私のほかにベテランの事務の女性が2人いて、親しくできていると思います。

ただ、私が採用されるときに、院長から「院内のデジタル化を進めたい」という要望を受けていて。電子カルテやレセコンは導入済みなんですが、受付だけが今でも紙カルテを併用していて、そこを変えていきたいという話だったんです。

事務の先輩方は何十年もずっと紙カルテでやってきたので、どうにも電子カルテを信用できないみたいで……彼女たちの説得とデジタル化の推進を任されている状態です。

──なんと、またしても大きな役割を背負っているんですか。

そうですね(笑)。なので、電子カルテを実際に使って効率よく操作できるところを見てもらったり、ベンダーの方に勉強会を開いてもらったりして、少しずつ説得を試みているところです。

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