【7月の金市場】6月は“短期的な逆風”も、コロナ禍以降続く“長期的な追い風”に変化なし…世界の中央銀行の戦略的買いが「5,000ドル突破」のカギに

【7月の金市場】6月は“短期的な逆風”も、コロナ禍以降続く“長期的な追い風”に変化なし…世界の中央銀行の戦略的買いが「5,000ドル突破」のカギに

中銀による買いが4,000ドルの下支えと5,000ドルへのカギに

世界の中央銀行の89%が「今後1年で金保有が増える」と回答

76ヵ国の中央銀行を対象とした大規模なサンプリングに基づく、2026年WGC金準備サーベイによれば、公的部門は引き続き金の積み増しに前向きであることが示されています※13。

回答の89%は今後12ヵ月で世界の中央銀行の金準備高が増加すると予想しており、過去最高の45%が自身の金準備高も同期間に増えると回答しています。減少を予想しているのは、1%にすぎません※14。長期的には、84%が今後5年間で金が外貨準備全体に占める割合は高まると予想し、準備資産における戦略的な資産配分の対象として、金の役割が高まっています※15。

また、米ドルに対する前向きな見解は後退しており、回答の74%は今後5年間で世界の外貨準備における米ドルの保有高は減少すると予想しています※16。この準備資産を分散するという変化は、地政学的な分断の進行という観点から語られることが増えています。

ある中央銀行は、「米ドルが外貨準備全体に占める割合は低下すると予想している。この減少は主に、米国の外交政策や政治の影響を受けやすい国々で起こるだろう」と回答しています※17。これは、世界の外貨準備ポートフォリオにおいて、金の比率が幅広く高まっている傾向に一致しています。米ドルの保有割合が約40%まで低下する一方、金の割合は約28%まで上昇しています※18。

新興国が金を買い続けている

中央銀行は2026年第1四半期に115トンの金を売却したにもかかわらず、ネットでは約244トンを買い越しました。これは前四半期を17%、前年同期を3%、さらに過去5年間の四半期平均を8%上回ります※19。

新興国の準備資産担当者は引き続き、公的部門の金需要を支える主要な原動力です。過去36ヵ月では、東欧とアジアの中央銀行はそれぞれ月平均12トン、11トンの金を買い越してきました※20。

最近の動きもこの傾向と一致しており、ポーランド国立銀行は4月に14トンを購入し、年初来の購入量は45トンとなりました。また、中国人民銀行は5月に10トンを追加購入し、保有量は2,332トンに達しました。買いは19ヵ月間続き、月次としては2024年12月以来の最大の購入量となりました※21。

2026年も、17年連続で中銀は「買い越し」の年になる見通し

当社のチームは、2026年が世界金融危機(GFC)以降、17年連続で中央銀行が金を買い越す年になるとの見方を維持しています。当社のモデルでは、2026年の需要は約680〜820トンの範囲内で、基本シナリオでは約765トンと予想しています※22。

3月にはロシアとトルコの中央銀行が、資金需要や通貨変動、財政赤字など国内の圧力に対処するために金を売却しましたが、当社は、こうした事例は結果的に金が戦略的かつ流動性の高い準備資産であることを改めて示すものと考えています。

実際、ストレスがかかる局面で金を活用できれば、長期的に準備資産を運用するうえで、金を保有することの意義が弱まるどころか、むしろ強まることになります。

[図表3]米国債から金へ:長期金利再評価の背後にある準備資産の変化★3

米国債の買い手は海外→国内へ…「金保有」の戦略的意義高まる

米国債を買う海外投資家が減っている

米国債の総保有高に占める海外投資家の比率は、2010年の約50%から2025年には約31%に低下しました。一方、FRBのシステム公開市場勘定(SOMA)による保有比率は、2021年の約25%をピークに、2025年12月1日の正式なバランスシート縮小(QT=量的引き締め)終了後に約13%まで低下しました※23。

これは、実際になにを意味するのでしょうか。米国債の限界的な買い手が、より価格に敏感な投資家へと移行しているということです。具体的には、マネー・マーケット・ミューチュアル・ファンド(MMMF)、銀行、ETF、ヘッジファンド、個人投資家などです。

つまり、米国の投資家がQT終了後に米国債の供給を吸収していますが、その代償として、より高い利回りが必要になっているのです。第2次トランプ政権下で見られるように、海外の公的部門の米国債に対する需要の後退は、準備資産やドル資産を乗り替える手段として金の戦略的な保有を促す可能性があります。

高まる金の存在感

そうした準備資産の変化は、金に一段と明確に表れています。金価格は2010〜2026年の間に3倍となり、欧州中央銀行(ECB)は2025年末時点で金が世界の公式準備高の27%に達し、米国債の22%を史上初めて上回ったと推計しています※24。

中央銀行による金の購入は2022年以降、年平均約1,000トンに達しており※25、金準備を積み増す中央銀行の確信度は過去最高水準まで高まっています※26。こうした準備資産のローテーションは構造的である可能性があり、機関投資家のポートフォリオにおける金保有の戦略的意義を高めます。

FRB議長はインフレ警戒姿勢…利下げは当面期待できず

6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でのウォーシュ議長による強いインフレ警戒メッセージは、FRBとして情報発信を減らしたいとの意向表明とともに、原油価格の下落(北半球が夏の需要期に入っているにもかかわらずイラン紛争前の水準まで戻っている)によるディスインフレのシグナルを上回る影響を与えているように見えます。

エネルギー価格の下落が第3四半期のインフレ圧力を後退させ、米国債利回り曲線の適度なブル・スティープ化が起きれば、FRBは政策金利の据え置きに落ち着く可能性があります。

明確にいえば、大きな経済ショックがない限り、再び利下げが実施される可能性は低いでしょう。一方、金投資家にとっては、利上げが選択肢から外れることが大きな追い風となり得ます。前述のとおり、短期金利市場ではトレーダーが、今後100日以内の少なくとも0.25%の利上げを積極的に織り込んでいます※27。

とはいえ、2年物米国債の利回りで4.20〜4.25%という水準は、タカ派姿勢がピークにあることを示している可能性があります。当社は、2年債利回りが3.75%程度まで低下するような展開になれば、金価格は1オンス当たり5,000ドルに向けて上昇が加速すると考えています。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。

Aakash Doshi(Head of Gold Strategy)、Mohamad Abukhalaf (Gold Strategist)、Diego Andrade(Senior Gold Strategist)、アーロン・チャン(ゴールド・ストラテジスト)

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