回答を比較すると見えてきた違い
最も詳細だったのはGeminiです。
Geminiは、電子申告を行う際には最新の政府発行IDが必要になることや、ソーシャルセキュリティ番号(SSN)が不可欠であることまで説明しました。
一方、ClaudeはIRS Free Fileの利用方法について比較的詳しく案内していました。ただし、ロスIRA(Roth Individual Retirement Account)については違いが見られました。ロスIRAとは、アメリカの個人向け老後資産形成制度の一つで、拠出時には所得控除を受けられないものの、一定の要件を満たせば運用益や将来の引き出しが非課税となる制度です。
Claudeは、ロスIRAへの拠出は税引後資金で行われるため所得税が軽減されないことには触れていましたが、高所得者には所得制限があり、一定以上の年収では拠出できなくなる点については説明していませんでした。この重要な点を指摘したのはGeminiだけでした。
このように、どのAIも一定水準以上の回答を返しますが、それぞれ説明の深さや得意分野には違いがあることが分かります。
便利でも万能ではないAI
今回の比較で最も印象的だったのは、3つのAIすべてが、高齢者にとって重要な節税策である適格慈善分配(Qualified Charitable Distribution:QCD)について全く触れなかったことです。
QCDは、70歳半以上(制度上の要件あり)の人が、個人退職口座(IRA)から慈善団体へ直接寄付を行う制度で、寄付金を所得として計上せずに済むため、課税所得を抑えられる可能性があります。所得税だけでなく、純投資所得税(Net Investment Income Tax:NIIT)などの負担軽減につながるケースもあります。NIITは、高所得者の利子、配当、譲渡益などの投資所得に対して課される追加の税金です
しかし、このような実務上重要な節税策は、いずれのAIからも提案されませんでした。
つまり、AIは税法を広く説明することは得意でも、「その納税者にとって最適な税務判断」を提示するには、まだ限界があります。さらに、AIの助言どおりに申告して追徴課税を受けたとしても、AIが責任を負ってくれるわけではありません。最終的な責任は納税者自身にあります。
現時点では、米国でもAIだけで確定申告を完結させることは現実的ではなく、税務アドバイスも専門家を完全に代替できる水準には達していないといえるでしょう。
