固定か変動か――アパートローン金利の実情
筆者が銀行員として勤務していた当時は、上記のマイナス金利やゼロ金利期間中であり、優良顧客であれば1.0%以下の固定金利を選べたため、多くの方が固定金利を選択していました。
なかには金利を更に抑えるためTIBORに連動する変動金利を選択する方もいましたが、現在ではTIBOR金利が急速に上昇しており金利上昇による影響を受けています。
また、マイナス金利解除後の現状においては、固定金利が非常に高い水準となっており変動金利を選択するケースが増えています。当該変動金利はTIBOR連動ではなく、各金融機関が設定する短期プライムレート(短プラ)に連動する形となっており、TIBORほど大きく動きませんが、それでも政策金利の動向によって変動するため将来的な金利上昇リスクを抱えています。
固定金利について触れたいと思います。固定金利は10年国債利回りの影響を受けます。金融機関は預金者の資金を貸し出しに回しているため、当然のことながら当該貸金が回収不能となる事態を避けなければいけません。その点、国債であれば日本国が返済能力を失わない限り安全です。
したがって、ローン金利についても最も安全と考えられる国債の利回りを基準として不動産のリスクなどを加算して融資をおこないます。
例えば、10年国債の利回りを3.0%であるとすれば、アパートローン10年固定金利の店頭金利は6.0%前後で設定する可能性が高いでしょう。
不動産の表面利回りが4.0%に対して返済する金利が6.0%であるとすれば、不動産収支から返済することが不可能となります。
一方で、すでに借りている変動金利が徐々に上がっていくことによる返済への影響や、固定期間満了時における新たな金利の上昇によっても不動産投資家は影響を受けます。
固定金利という言葉自体からは返済まで永続的に固定されているという錯覚を覚えますが、あくまでも一部期間を固定しているに過ぎず、当該固定期間が満了すれば変動金利に戻ります。実務上は、固定期間満了前に金融機関の担当者と金利の交渉をおこない、新たに金利の選択をおこないますが、昨今では前述の通り固定金利が大きく上昇しているため変動金利を選択するケースが増えています。
金融機関の役職員に話を伺うと、金利更改にあたって顧客との交渉は非常に骨が折れる、とのことです。頻繁に金利状況を把握している方であれば理解が早いかもしれませんが、全員が常に把握している訳ではなく、急に金利が2倍や3倍との提示を受ければ驚くのも当然のことです。
金融機関側にとっても政策金利が上がっている以上、現状のまま据え置くということは困難であるため骨の折れる交渉となっているのが実状です。
金利1%と5%、手残りはここまで変わる
ローン返済額(元金+利息)が増えるため不動産の純収益(不動産収入-不動産経費)で返済が賄えなくなり、その結果給与など他の収入から補てんしなければ維持できなくなる可能性があります。
金利の上昇が続けば投資家の生活に影響を及ぼす事態にもつながりかねません。
先述したレバレッジ効果の点で検討しましょう。
金利が1%の場合には以下の通りでした。
NOI:500万円 - ローン返済額:290万円 = 210万円金利が5%まで上がった場合を見ると以下の通りとなります。
NOI:500万円 - ローン返済額:480万円 = 20万円先ほどの例ではローンを組み合わせて4物件購入するとしていたため、手残りを求めると以下の通りとなります。
20万円/物件 × 4物件 = 80万円自己資金のみであれば500万円の手残りであったため、借入をしたことで大きく負け越してしまいます。
全額自己資金:500万円(A)
レバレッジ:80万円(B)
(B)-(A)= -420万円
このことを「負のレバレッジ」と言ったりもします。
不動産投資においては金利によって、その成果が大きく左右されます。NOIは500万円で変わらないことから、金利が低い時はNOIの取り分は「投資家>金融機関」ですが、金利上昇によって「投資家<金融機関」となります。
このことは投資家と金融機関とがNOIをめぐって綱引きをしているようにも見えます。
したがって、投資家はよりNOIが増えるように金融機関と金利の交渉をしたり、繰上げ返済によって返済額を引き下げる戦略が必要となるわけです。
先ほどの例では、なんとか黒字を確保していますが更に金利が上がれば赤字に陥る可能性もあります。赤字に陥れば不動産を手放すことも検討しければいけません。
したがって、金利上昇によって不動産市場には売却するための収益不動産が多く出てくるかもしれません。不動産価格は需給バランスで決まるため、売却希望者の数が増える即ち「購入希望者<売却希望者」となれば不動産価格の下落につながります。
